琉球風水とは?知っておきたい基礎知識

首里城の外観写真

琉球風水とは、本土の風水とは少し異なる沖縄に伝わる風水のこと。琉球王府にはフンシミー(風水見または風水看)という役職があり、首里城も風水に基づいて設計されているといわれています。今回は、2022年10月に500ページからなる琉球風水の本格入門書『「沖縄風水学」入門』を執筆した、沖縄風水アカデミー代表の和来龍先生に琉球風水について教えていただきました。

この方にお話しを伺いました!
沖縄風水学のイメージ

和来龍さん

沖縄風水アカデミー 代表/琉球風水師、風水設計コンサルタント

島根県出雲市生まれ。鳥取大学大学院修了。工学修士。卒業後、建設コンサルタント会社にて関西国際空港建設時の環境アセスメント調査などに関わるが、生死を彷徨う大病にかかり臨死体験を経て奇跡的に回復。これをきっかけに運勢学や風水を研究するようになる。1995年から沖縄に拠点を移し、住宅やマンションの風水設計を行っている。2020年4月から琉球新報『週刊かふう』にエッセイ「一望無垠 風水看がみる景色」を月一回連載中。

著書
『幸せを呼ぶ琉球風水』
(https://www.amazon.jp/dp/4899820437)

『「沖縄風水学」入門』
(https://www.amazon.jp/dp/4899824378)

琉球風水師 和来龍のおもしろ琉球風水
(https://ryukyufusui.com/)

本土の風水と琉球風水、何が違うの?

風水羅針盤のイメージ

風水はもともと中国発祥の学問です。中国から日本や琉球へと伝わり、それぞれの風土や文化に合わせて発展したため、国や場所によって異なる部分があるようです。まずは各地の風水の歴史や背景を比べてみましょう。

中国の風水

風水の起源は約4000年前の中国です。住居やお墓、都市などをつくる際に方角や地脈、陰陽の気など土地の吉凶を科学的に分析する学問で、現在のような占いや開運術的な要素はありませんでした。

960年~1644年の宋から明の時代にかけて儒教思想にもとづいた風水として完成したといわれています。

日本の風水

日本には、中国で風水が完成する前の飛鳥時代の602年頃に朝鮮半島から伝来し、日本独自の理論で発展して陰陽道(おんみょうどう)となっていきます。平安京の都城にも土地の選び方や敷地内での水の流れ方などに陰陽道の考え方が用いられています。

江戸時代になると中国の福建で発展した風水学の文献が輸入され、家を八方位に分けて吉凶を判断する「八宅法」が普及しました。この時期に、北東を鬼門方位とする考え方も加わり、江戸庶民に家相として浸透していきました。

現在の日本では家相をもとにした八方位によるインテリア風水術として注目されることが多いようです。

沖縄の風水

沖縄に風水が伝えられたのは中山王・察度(さっと)時代と考えられています。琉球王朝時代の歴史書『球陽』巻六には、1392年に中国の福建から那覇の久米村に移住した三十六姓の人たちが風水を実践していたことが書かれていますが、この時は学問としてではなく彼らの文化や風習として風水を持ち込んだようです。

17世紀頃から琉球王朝は国策として風水を活用しはじめます。風水は「フンシ―」、風水師は「フンシミー(風水見または風水看)」と呼ばれました。フンシミーは福建で風水を学び、帰国後は役人として国づくりや村づくりに関わりました。

首里城の建築、集落の整備、山林の保全、河川の改修、住宅の区画割や建築、お墓、祭祀に至るまで、生活のあらゆるところにフンシーの影響がみられます。

琉球風水の特徴

沖縄で発展した風水は、もっと工学的な考えに基づいている説明イメージ

画像提供:和来龍さん

風水というと運気や占い的なイメージが強いかもしれませんが、中国から伝わった風水、沖縄で発展した風水は、もっと工学的な考えに基づいているものなのです。

占いではなく学問

琉球王朝の宰相であり風水師であった蔡温によって確立された琉球風水は、地理学、気候学、土木学、建築学、環境学などさまざまな要素を考慮し、安全で快適に生活するために理にかなった選択をするための知識と技術です。

占い的な要素もありますが、それは誰にでも同じ結果をもたらすものではありません。誰にでも同じ結果をもたらす自然の摂理に沿った内容を重視しています。

例えば、東や南側は日当たりがよい場所、北東は日が当たりにくく湿度が高くなる場所、というのは変わることのない現象。このような自然の摂理に基づいて間取りや暮らし方をプランニングするのが琉球風水の基本です。

太陽の動きと方位の特徴を知る

本土では北東は「鬼門」とされ、病や災いを呼び込む方位だから玄関やキッチン、お風呂場を配置するのは凶とされています。しかし実際は方位に吉凶があるわけではなく、それぞれ特徴が異なるだけなのです。

北東は日当たりが悪く風通しもよくありません。そこに玄関を配置すると家の中に冷たい空気が入り込んで底冷えし、住んでいる人たちも体が冷えて病気になりやすくなってしまいます。また、キッチンやお風呂場などの水回りを配置すると湿度が高くなり、ダニやカビが発生し体に悪影響を与えます。

このように方位には特徴があり、その特徴を見極めた間取りにすることで、快適で健康的に暮らせる家になるのです。本土では寒さを避けるために北東を極端に重視しますが、暖かい沖縄では太陽の動きを基準とした陰陽の考えを重視しています。

  • 陰の方位

北西・北・北東=日当たりが弱く、落ち着いて静かな方位

  • 陽の方位

南東・南・南西=日光に恵まれ、明るく、にぎやかで活動的な方位

  • 半陰半陽方位

東・西=陰陽方位の境界にあって、季節によって陽射しの入り方が大きく変わる方位

このように、太陽の動きと日光の入り方や方位の特徴を知り、それに合わせた間取りや暮らし方をすれば快適に過ごせます。

琉球風水でみる「いい住まい」

沖縄風水は工学的な考えに基づいている説明のイメージ

画像提供:和来龍さん

琉球風水で考える「いい住まい」とは自然と調和していることです。居住空間は、玄関やリビング、トイレなど家族以外の人も使用するパブリック空間と、寝室や子供部屋、お風呂場など家族だけが使用するプライベート空間に分けられます。

陰の方位(北西・北・北東)にプライベート空間を配置し陽の方位(南東・南・南西)にパブリック空間を配置すると、方位のもたらす気のエネルギーと居住空間が調和するため、住み心地の良い家になるといえます。

朝、家族が集まるリビングやダイニングに太陽の光が入ると気持ちよく体が目覚めます。また、紫外線には殺菌作用があるので空間が浄化され、清々しい気持ちになります。

家の中に太陽の光と風を通して、健康的で快適に暮らす。これが自然と調和した「いい住まい」なのです。

まとめ

「私が沖縄の風水に魅力を感じるのは、生活に役立つ現実的なところであり、現代にも応用できる工学的な内容を含んでいるからです」と和来さん。

琉球風水の考えには全て、環境工学や土木工学などに基づいた理由や意味があるのです。それらを踏まえたうえで、自分たちが求めるライフスタイルに合う間取りや内装、設備が揃った住まいを選ぶことが大切です。

次回は、琉球風水を取り入れたマンションの選び方や暮らし方などについてご紹介します!

 

取材・文/仲西なほ子

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