沖縄のお盆、マンション住まいはどうする?【球陽寺①】

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沖縄のお盆は旧暦に行われます。2024年の旧盆は、8月16日(金)~ 8月18日(日)。数々の年中行事の中でも、お盆は沖縄県民にとって最も重要な行事といえるでしょう。そこで今回は、球陽寺(コザ本願寺)の副住職・帰依 剛龍さんに仏教的なお盆の由来や沖縄のしきたりに対する考え、マンションライフで行うお盆のコツなどを教えていただきました。

この方にお話しを伺いました!
帰依剛龍さん(サイズ調整)

 

帰依 剛龍さん

コザ山 ライカム院 球陽寺(コザ本願寺) 副住職

2022年に浄土真宗本願寺派(西本願寺)球陽寺の副住職に就任。学術的な琉球・沖縄の儀式と法要を分かりやすく伝えるお坊さんとして、SNSなどを積極的に活用している。毎週金曜日18:00〜18:30は、FMコザから「キエ剛龍の沖縄のしきたりと仏教」を発信中。

コザ山 ライカム院 球陽寺(コザ本願寺) 
http://www.kozazankyuyoji.com/

帰依 剛龍さん インスタグラム 
https://www.instagram.com/gohryu88/

お盆とは?

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お盆は全国各地で行われる夏の一大行事です。風習は地域によって少しずつ異なりますが、沖縄は全国的にも異なる点が多いとされています。そこで、副住職の剛龍さんに、お盆の由来から沖縄と内地のお盆の違い、共通点までを解説していただきました。

お盆の由来

お盆とは、正式名称を「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といいます。サンスクリット語の「ウランバーナ」が語源で、「逆さ吊りにされる苦しみ」という意味があります。お盆の言葉にそんな意味が含まれているなんて、意外ですよね。その由来は、次のような法話が元になっています。

 今から2500年ほど前、お釈迦様の弟子である目連が、亡くなった母親が餓鬼界に墜ちて苦しんでいることを知り、師匠であるお釈迦様にどうしたら母親を救うことができるのか問いました。「7月15日に夏の修業を終える修行僧たちを労いなさい」とお釈迦さまに教えていただき、目連が精いっぱい修行僧たちに食事を振舞ったところ、母親は餓鬼界から救われ成仏できました。

以来、仏教の国である中国や日本では、7月15日にご先祖様を敬うお盆が行われるようになったといわれています。そして、母親を救うことができた目連が喜んで踊ったのが盆踊りのはじまり、という考えもあります。

内地と沖縄のお盆の違い

お盆の由来は同じですが、内地と沖縄では風習が異なります。最大の違いは日程でしょう。沖縄は旧暦7月13日~15日の3日間(地域によっては4日間)で、内地は新暦8月13日~16日の4日間が主流です。

盂蘭盆会の法話からも、以前は全国的に旧暦の7月15日を中心にお盆が行われていました。明治になって新暦が採用されましたが、新暦7月15日は農繁期と重なって支障が出る地域が多かったため、「月遅れ盆」として新暦8月15日をお盆とする地域が多くなったようです。沖縄はお盆だけでなく、年中行事を旧暦で行う風習が残っています。

内地ではご先祖様はキュウリとナスで作った精霊馬(しょうりょううま)に乗ってあの世とこの世の自宅を行き来するとされていますが、沖縄ではグーサンウージというサトウキビを使ってもらいます。精霊馬は、キュウリが迎えの馬でナスが送りの牛。馬に乗って早く自宅に来れるように、帰りはたくさんお土産を持って牛に乗ってゆっくりと、という意味があります。グーサンウージには、来るときは杖として使っていただき、帰りは肩にかけてお土産をたくさんぶら下げて持って行ってもらう、という意味があります。

他にも、内地はお盆にお坊さんを呼ぶ、沖縄はウークイ(送り盆)にウチカビ(ご先祖様があの世で使うお金)を炙るなど、違いはたくさんあります。また、内地でも地域によって細かい風習は異なります。長い年月の中で、全国各地それぞれの風土に合ったスタイルが確立されているのです。

内地と沖縄のお盆の共通点

内地と沖縄、全国各地、多少の風習は違っても基本的にお盆にすることは同じです。あの世にいるご先祖様をこの世の自宅にお迎えして、供養する。家族や親戚が集まり、ご先祖様と一緒に楽しく賑やかに過ごすのが日本のお盆です。

ご先祖様に対する気持ちや目的は全国共通。しきたりを難しく考えずに、ご先祖様に対する感謝と敬いの気持ちを大切にするといいですね!

沖縄のお盆のしきたり、どう考える?

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お盆にお供えする物やその配置など、沖縄には主流となる決まり事や作法があります。ルールブックのような本もいくつか出版され、各家庭で行事を取り仕切る女性たちのバイブル的な存在になっています。伝統的な方法はそういった本に書いてあるので、副住職の剛龍さんにはお盆の考え方について伺いました。

地域や家庭でも違いがある

日本各地で風習が異なるように、沖縄県内でも大きく分けて南部・中部・北部・各離島でお供え物やウンケー(迎え盆)、ウークイ(送り盆)の方法が微妙に違います。もっと細かくみれば家庭ごとにも多少の違いがあり、「嫁ぎ先でお盆や行事のやり方が違って戸惑った」という話もよく聞きます。

剛龍さんによると「祖先を大切にされてるからこそ、違いが出る」のだそうです。大切にする方法も人や家庭によってこだわりがあり、それが子や孫に受け継がれていきます。「沖縄のお盆の形はこうあるべき」ではなく、家ごとのやり方があって当たり前と考えるといいでしょう。

形式よりも意味が大切!

お盆や年中行事を「ちゃんとやろう」と思えば思うほど、形式にこだわってしまう場合があります。重箱の中身は?3枚肉の向きは?お供え物の並べ方は?など「形」ばかりを受け継いでしまいがちですが、本来はひとつひとつに意味があり、それが大切なのです。

「作法も大切ですが意味がちゃんと通っていれば、お供えするアイテムは何でもいいんですよ」と副住職の剛龍さん。「例えば、重箱がなければご馳走を大皿に盛ったり、伝統的なお菓子ではなくご先祖様の好きだった洋菓子をお供えしたりするのもアリです。『●●じゃなきゃいけない』『これはダメ』と形式にとらわれるのではなく、自分たちの方法にちゃんと意味があったら、それはもう一つの正解です

マンションで行うお盆のコツ

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新築分譲マンションなど集合住宅に住む人が多くなった現代では、伝統的な方法でお盆を行うのは難しくなってきています。そこで、マンションでお盆の行事を行う場合の対処法や考え方についても教えていただきました。

スペースに合わせたお供え物

マンション住まいだとお仏壇がコンパクトだったり広い和室がなかったりと、スペースに悩まされることが多いでしょう。そんな場合は、お供え物をアレンジしましょう。

料理やお餅は小さな重箱に詰める、お菓子や果物も数を少なくする、そして全て左右に2つずつの対ではなく1つずつ並べるなど、自分達の住まいに合わせたスタイルでいいのです。

お供え物を並べるスペースがないから、大勢の人を呼ぶことができないからといって、できないことを理由に「お盆をしない」、となると本末転倒です。

ご先祖様をお迎えして、感謝し、敬い、一緒に食事をしながら楽しく過ごすという気持ちがあれば、伝統的な形式にこだわる必要はないのです。

ムカイスーコー(向焼香)でもOK

お仏壇がない場合や忙しくて実家に帰れない場合は、「ムカイスーコー(向焼香)」をしましょう!自宅の玄関先で、実家のお仏壇に向かってウートートゥ(お墓やお仏壇に向かって両手を合わせてとなえる言葉)するという方法。事前に方角をきちんと調べておくといいですね。

ウンケーの日に実家と同じ時間にウートートゥする、実家のお仏壇に代理焼香をお願いするなど、実家と連携を取ると家族の気持ちが一つになり、よりご先祖様にも伝わりやすいでしょう。

形式よりも気持ちが大切!

「マンション住まいでも遠く離れた場所にいても、お盆はできます。形より気持ちを重視し、今の自分に何ができるかを考えるといいでしょう。沖縄の行事や文化について知っていたら、気持ちを表す方法の選択肢も増えるのかなと思います。知識がないと選択肢もなく『できないからやらない』『分からないからやらない』ということになってしまいます。伝統的な形式を守り受け継ぐことも大切ですが、ご先祖様を敬う気持ちを大切にし、自分に何できる方法で行えるといいですね」

まとめ

長い年月の中、時代に合わせて変化してきたからこそ年中行事として根付いてきたお盆。この先も形は変わっても、先祖を敬う気持ちは変わらず受け継がれてほしいものですね。

さて、次回の記事も引き続き球陽寺副住職の剛龍さんにご協力をいただきます!お題はお盆の風物詩、エイサーです。どうぞお楽しみに!

 

取材・文/仲西なほ子

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