沖縄の冬の風物詩!ムーチー作りをとおして知る、島の文化と人々の暮らし

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月桃の葉で包んで蒸したお餅「ムーチー」は、沖縄の行事に欠かすことのできない伝統的なおやつのひとつです。今回はそんなムーチーについて、南城市うふざとヌムーチー(大里の餅)祭実行委員会の皆様に詳しく教えていただきました。

この方にお話しを伺いました!
南城市うふざとヌムーチー祭実行委員会

 

(一列目左から)比嘉さん、渡慶次さん、玉城さん
(二列目左から)上原さん、稲福さん、伊波さん

南城市うふざとヌムーチー祭実行委員会

   

沖縄県南城市で行われる伝統的な祭り「うふざとヌムーチー祭」の企画や運営を担当する組織。地域の歴史や伝統文化を守りながら、次世代に継承することを目的として活動をしています。

 ムーチーはいつ食べる?

   
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ムーチーは沖縄方言で「餅」のこと(漢字で書くと「鬼餅」)。沖縄で古くから伝わる餅の一種で、旧暦の12月8日(ムーチーの日)に作られ、子どもの健康・無病息災や家族の繁栄を祈るために食されています。

“ムーチーを食べると元気な子に育つ”という言い伝えがあることから、子どもが生まれて最初に迎えるムーチーの日を「初ムーチー」といい、親戚や近所にムーチーを配る風習があります。

最近では目にしなくなりましたが、かつては子どもの年齢と同じ数のムーチーを一本に繋ぎ合わせ、天井や軒先に吊るす「提げムーチー」もよく見られたそうです。
   

地域によっても異なるムーチーの包み方

   
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ムーチーといえば月桃のイメージが強いと思いますが、県の天然記念物であるクバの葉(ビロウ)で包む「力(チカラ)ムーチー」もあり、包み方も地域によって異なります。   

茅葺きの小屋を燃やす「ムーチー家」とは?

   
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南城市の西側に位置する西原集落では「ムーチー家」と呼ばれている茅葺きの小屋を燃やす行事もあります。ムーチーの日の晩に集落内の遊び場に若者が集まり、茅葺きの小屋(ムーチー家)を作り、その中で芋やニワトリを焼いてたべ、最後は小屋に火をつけるという行事で、五穀豊穣や無病息災を祈願するために行われてきました。  

ムーチーの起源説話

   
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ムーチーの由来は諸説ありますが、ムーチー発祥の地とされている南城市大里に伝わる民話「大里鬼(うふざとうなー)」は、沖縄でも伝承されている有名な起源説話です。

   

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それはこんなお話です。

首里の金城村に兄妹が住んでいました。しばらくすると兄は南城市大里に引っ越しをし、その後に大里の洞穴に住みつき、牛や馬、人を殺してその肉を食らっている…という噂が広まるように。兄は村人から「大里鬼」と呼ばれ、皆から恐れられるようになっていました。気になった妹は兄の様子を見るため兄の家を訪ねました。すると、皆の噂通り、調理中の鍋の中では人肉が煮えていました。

ショックを受けた妹は自宅に戻り、アーサを混ぜ込んだ餅をたくさん作りました。食べると胃の中で膨らんでお腹がいっぱいになるアーサをムーチーに混ぜ込んで、満腹になったところで兄を崖から突き落とそうという計画です。妹は計画通りにアーサ入りの餅を兄に差し入れ、満腹で動けなくなった兄を崖から突き落として退治。それ以来、この集落ではムーチーを作るようになり、厄払いや健康祈願をするようになりました。

旧暦の12月8日が「ムーチーの日」となったのは、妹が鬼を退治した日が12月8日だったから。これがムーチーが無病息災や厄払いで食される所以になったそうです。   

ムーチーが長持ちするのは月桃効果

   
ムーチーを月桃の葉で包むのは、月桃の葉の強い香りに“邪気を払う”効果があると信じられていたから。月桃の葉には抗菌・殺菌・防腐作用が期待されているため、中に包んだお餅は数週間日持ちするとされています。冷蔵庫に入れると固くなってしまいますが、電子レンジで少し温めることで再び柔らかくなり、出来たてのようなおいしさを楽しむことができます。

本土のお餅はもち米を蒸して杵でついたものですが、沖縄の餅(ムーチー)はそれとは異なり、もち米を粉状に挽いた「もち粉」を水で練り、月桃の葉で包み、蒸し器で蒸します。
  

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味付けは黒糖を使ったものが一般的ですが、砂糖を加えない「白ムーチー」や、紅芋パウダーを練り込んだムーチーも定番の人気フレーバー。昔は各家庭で作られていましたが、最近は手作りする家庭は随分と減りました。その代わりに、ムーチーの日が近づくとスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも購入できるようになりました。

独特のもちもちとした食感とほのかな甘み、月桃の爽やかな香りが癖になるムーチー。

近年では様々なフレーバーや色鮮やかなムーチーも登場し、バリエーションが増えています。 

南城市うふざとヌムーチー祭実行委員会の役割

   
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村の商工会が、沖縄伝統のひとつであるムーチー文化を継承・発展させるため、村おこし事業の一環として、発祥の地である大里村で祭りを立ち上げました。平成9(1997)年からスタートした祭りでしたが、平成の大合併(2006年)により大里村を含む4町村が南城市として生まれ変わり、そのタイミングで一度祭りは途絶えてしまいました。しかし平成27(2015)年に「南城市うふざとヌムーチー祭実行委員会」が設立され、甘い香りと共に祭りは復活。今に続いています。

南城市大里地区では毎年12月の第二日曜日に「うふざとヌムーチー祭」が開催されます。
  
   

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平成9年に祭りを発足し、平成9~20年は写真にあるような大鍋で作っていたそうです。村合併後はしんめーなーび(1mぐらいの鍋)で作っています、とのこと。

(※写真はその当時のもの)

うふざとヌムーチー祭りでは、ムーチーや黒糖づくりを体験できるだけでなく、できたてのムーチーを購入することができます。更には地元団体による演舞などで盛り上がり、2023年の祭りでは1500人以上が来場されたそうですよ。
 

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このイベントは誰でも参加することができるので、体験してみたい方はぜひ次回のお祭りに参加してみてくださいね。

「大里地区だけでなく、南城市全体を盛り上げたい」と話す南城市うふざとヌムーチー祭実行委員会は、教育委員会や女性団体と協力し合い、地域の繋がりをさらに強化。「沖縄全島、さらに本土からもお客様が集まるようなイベントへと発展させていきたい」と日々課題と向き合っています。
 

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2025年3月8日には「ムーチーの伝統が次世代へと受け継がれ、地域の絆がさらに深まってほしい」という願いを込めて、玉城にあるグスクロード公園で、ムーチーを広めるためのイベントを開催予定です。

月桃の葉は沖縄ではあちこちに生えているので手に入れやすく、ムーチー作りも意外と簡単なので、興味のある方はご自宅で作ってみてはいかがでしょうか?   

自宅でも簡単!うふざとのお母さん直伝のムーチーレシピ

   
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黒糖ムーチーレシピ(約30個分)
もち粉……1kg 
黒糖……300g 
甘薯……300g  
水……700〜750g 
月桃の葉……30枚(曲がるように軽く蒸しておく)
   

作り方
もち粉、黒糖、甘薯をボウルで混ぜ、少しずつ水を加えて耳たぶぐらいの固さになるまでこねます。冷蔵庫で1時間ほど寝かせ、生地を30等分したら蒸した月桃の葉に置き、包んだら25〜30分ほど蒸し、完成です。

粗熱が取れたら食べ頃です。

冷凍庫で1ヶ月ほど持つので、食べきれない分は冷凍保存がおすすめ。ぜひ作ってみてくださいね。
   

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また、学校行事やワークショップなどではムーチー作り体験を開催することがあるので、その会に参加してみたり、お子さまと外出先で月桃を見つけた際には「これがムーチーを包んでいる葉っぱだよ」と親子で月桃の香りを嗅いで楽しんだり、ムーチーにまつわる思い出話をしてみたりするのも良さそうですね。

自宅でムーチーに作りに挑戦する際は、同じマンション内のお友達にもお裾分けをすることで、ご近所さんとの関係性もさらに良好になるかもしれません。ムーチーをきっかけに、沖縄暮らしがもっと楽しくなりますように。

   

撮影・取材・文/舘幸子

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