450年の歴史!普天間の獅子舞とは?

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地域の五穀豊穣や焼厄払いを祈願して、各地で行われている獅子舞。今回は県内でも歴史が古い普天間の獅子舞について、字普天間郷友会会長の宮城哲哉さんに詳しく教えていただきました。

この方にお話しを伺いました!
字普天間郷友会宮城哲哉さん

 

宮城哲哉さん

字普天間郷友会 会長

   
獅子舞の運営や保存活動に携わり、2024年4月に字普天間郷友会会長に就任。2013年に行われた伊勢神宮の式年遷宮の際には、遷宮奉祝奉納行事に参加し演者として獅子舞の演舞を奉納した。

   
普天間の獅子舞(市指定無形民俗文化財)
宜野湾市 文化課 文化財整備係 
https://www.city.ginowan.lg.jp/soshiki/kyoiku/1/6/7816.html

 

普天間の獅子舞とは

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画像提供:字普天間郷友会

 日本の伝統的な民俗芸能として全国各地で親しまれておりますが、沖縄の獅子舞は県外とは少し違う文化を持っています。その中でも歴史ある字普天間郷友会の獅子舞にクローズアップしてみました!

沖縄の獅子舞文化

県外の獅子舞は、獅子頭に唐獅子文様の胴幕をつけてお正月やお祭りなどの縁起の良い日に行われるのが一般的です。1人で演じる場合も多く、ときには5〜6人で大きな胴体を形成することもあります。

沖縄で受け継がれている獅子舞は、村を守る神獅子として崇められ、五穀豊穣や厄除け・無病息災などの祈願行事として行われています。モフモフとした毛で覆われた毛むくじゃらな体が特徴的で、基本的には頭と胴をそれぞれ担当する2人構成で演じられます。

地域ごとにそれぞれの獅子と演舞が伝承され、古いところで約500年の歴史があり、獅子頭(ししがしら)のことを尊敬の念を込めて獅子加那志(ししがなし)(※沖縄の方言で、尊ぶの尊敬語を表す言葉)と呼ぶ場合もあります。

普天間の獅子舞

村興しの神として、琉球国王の尚元王(しょうげんおう)から当時の普天間村に獅子が贈られたと伝わっています。尚元王の在位期間は1556~1572年なので、約450年の歴史があるといえます。

獅子は厄払い・豊年満作・子孫繁栄を願う神、招福の神、また悪魔も屈伏させる神通力がある村の守り神として崇められています。獅子頭に赤いあご髭があることや舞の順序がしっかり様式化されていること、ユーモラスな細かい芸をたくさん持っていることなどが特徴です。

450年間ずっと続いていたわけではなく戦前に途絶えてしまっていましたが、世情安定や文化継承のためにと1955年に復活を遂げました。現在の獅子頭は戦後2代目として大切に受け継がれ、普天間の獅子舞は宜野湾市の市指定無形民俗文化財となっています。

伝統を守る字普天間郷友会

普天間の獅子舞は、地域の人たちからなる青年会や自治会で運営されているのではなく、字普天間郷友会が演舞・保管を担い後世に伝えています。郷友会は、現在の普天間の発祥となる旧普天間部落出身家系の子孫で形成されており、今も普天間に住んでいる人もいれば、県内各地や県外に移り住んでいる人たちもいます。

地域ではなく家系で守っているのが最大の特徴でしょうか。現在の郷友会会員は約380世帯。この世帯の男系を中心に、獅子舞やウマチー(村ごとに五穀豊穣や繁栄を祈願する行事)などの行事を受け継いでいます。

字普天間郷友会会長の宮城さんも、祖父・父に続き親子3代で会長を務めています。しかし、運営については「現在は旧普天間部落出身の家系だけで成り立っていますが、約380世帯の会員数があっても普天間付近に住んでいない人や行事に携わっていない人も多いので、次世代、次々世代と考えると、いつまでこの形態を守りきれるか……」と、不安もあるそう。

450年の伝統を現代から未来へとつなぐために、今できることに取り組んでいる字普天間郷友会。その貴重な獅子舞をぜひ多くの人に見ていただきたいです!

普天間の獅子舞はいつ見られる?

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画像提供:字普天間郷友会 

普段は字普天間拝所にある獅子屋(シシヤー)といわれる場所に保管されている獅子。集落の災厄払い・子孫繁栄・豊年満作・無病息災などを祈願するため、毎年決まった日にこの拝所で獅子舞が披露されます。

年に数回だけ姿を表す獅子神

普天間の獅子舞が見れるのは、お盆のご先祖様を迎えるウンケーとお送りするウークイの日、8月の十五夜、普天間宮例大祭のときだけです。

毎年旧暦の7月13日(ウンケー)、7月15日(ウークイ)、旧暦の8月15日(十五夜)は獅子屋がある拝所でそれぞれ3回ずつ演じられます。旧暦9月の普天間宮例大祭のときには普天間宮の特設舞台で1回、獅子舞を奉納します。

その他、獅子の点検と練習のために出していいとされている旧暦の7月10日を含めて、獅子は年に5日しか出せません。演者が獅子に入って練習できるのもこの5日しかないため、一人前になるまでには年数がかかります。

「獅子は神様なので、自由に出すことはできないんですよ」と宮城さん。毎回獅子屋から出すときには酒・塩・米を獅子の鼻の上に垂らしてウートートゥ(お墓やお仏壇に向かって両手を合わせてとなえる言葉)し、関係者全員お猪口でお酒を酌み交わして身を清めます。

普天間の獅子舞の特徴

前踊り(メーオドリ)のかぎやで風で幕を開け、約10分間、獅子が舞います。自由に舞い踊っているイメージがありますが、普天間の獅子舞は順序がきちんと決まっていて様式化された伝統的な演舞です。

戦後に復活した際には、アクロバティックな動きを取り入れてエンターテインメント性を出していた時期もあったそうですが、現在は戦前より受け継がれている伝統の型を厳かに舞う様式を守っています。頭や四肢を大きく動かす力強い舞いや、舞台中央に腹ばいになりユーモラスないろいろな技を披露するが普天間の獅子舞の特徴です。最後は、鞠や鈴が付いた紐を思い切り投げ飛ばして獅子は帰っていきます。

お盆や十五夜など3回披露するときには、1回目にベテランが舞い、2回目3回目は若手が舞うので、熟練の舞いと初々しい舞いのどちらも楽しめますよ♪

普天満宮

初代の獅子は普天満宮に鎮座

年に数回しか見られない普天間の獅子舞ですが、役目を終えた戦後初代の獅子は普天満宮の預かりとなり、現在は普天満宮洞穴の入り口に飾られています。こちらはいつでも見ることができるので、獅子頭を拝みたい場合はぜひ普天満宮洞穴を訪れてくださいね!

身近な獅子舞を楽しもう!

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画像提供:沖縄観光コンベンションビューロー

獅子舞は見て楽しむだけでなく、ご利益もあります。健康祈願のため獅子に頭や体を噛んでもらう風習があるので、積極的に家族全員噛んでもらいましょう!また、演舞が終わったら触れることもできるので、ぜひ獅子の頭や体をなでて親しんでくださいね。

各地で催される獅子舞

普天間の獅子舞は2024年はあと2回、9月17日(火)21時から拝所で、10月17日(木)普天満宮例祭獅子舞奉納で見ることができます。

その他にも、国選択無形文化財の「勢理客の獅子舞」、那覇市無形文化財の「汀良町獅子舞」、中城村無形民俗文化財の「津覇の獅子舞」など県内にはたくさんの獅子舞があり、十五夜の時期は各地で行われています。

また、毎年秋にはうるま市で「沖縄全島獅子舞フェスティバル」が開催されます。各地域のさまざまな獅子舞が一堂に会するので、迫力ある獅子舞がたっぷり楽しめるおすすめの機会です!

地元の伝統行事に触れてみて

字普天間郷友会会長に就任して、改めて伝統行事を継承することの大切さを感じているという宮城さん。「会長という立場になって、途絶えていた文化を復活させ守ってきた先輩方の苦労を知り、自分もしっかり次世代に繋げていかなければと思っています。各地域には獅子舞以外にもさまざまな文化的行事があります。私たちの獅子舞を見た人が、自分の地元の伝統行事や文化に興味を持ってくれることを願います。活動している人たちにとっては、地元の人が見に来てくれるだけでも嬉しいものです。特に子育て世代には、お子さんに伝統行事に触れる機会をつくってあげてほしいと思います」と、お話してくださいました。

皆さんもぜひ、身近な伝統行事に目を向けてみてくださいね。

まとめ

新築分譲マンションを購入する人の中には、地元から離れ新しい土地で生活をスタートさせる家族も多いはず。でも家族にとって、特に子どもにとってはこれから育つ地域が「地元」になります。

住んでいる地域の文化に親しみ楽しむことも、大切な暮らしの一部。新しい住まいと新しい土地に住むアイデンティティを育んでみてはいかがでしょうか。

 

取材・文/仲西なほ子

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