沖縄の行事を彩る「ムイグァーシ(盛菓子)」とは?

盛り菓子

お盆やシーミー(清明祭)、トゥシビー(生年祝い)に結納など、沖縄ではご先祖様を敬う行事やお祝い事の際には「ムイグァーシ(盛菓子)」を用意します。でも、「行事のお菓子ってどうやって選べばいいの?」「お供えの仕方は?」など、分からないけど聞きにくいことってありますよね。そこで、那覇市牧志市場本通りにある創業70年の外間製菓所の三代目代表外間有里さんに、沖縄の伝統行事のお菓子についてお話を伺いました。

この方にお話しを伺いました!
外間さんプロフィール写真

 

外間有里さん

外間製菓所三代目代表/那覇市議会議員

那覇市出身。2014年琉球大学卒業後、2016年に事業構想大学院大学へ進学し、経営学を学ぶ。第43代那覇観光キャンペーンレディを経て、2019年に祖父が創業した外間製菓所の代表に就任。三代目として沖縄菓子の魅力発信に精力的に取り組む一方、29歳で那覇市議会議員に立候補し当選を果たした。「商売人の声、若者の声、女性の声」を議会に届け、市民感覚を重視した行財政改革による市民生活向上に努めている。

 

外間製菓所 https://hokamaseika.com/

インスタグラム https://www.instagram.com/hokamaseikasho/

沖縄の行事とお菓子

沖縄のお菓子

画像提供:外間製菓所

沖縄の伝統行事には欠かせないお菓子。色んな種類をお皿に盛り合わせるムイグァーシは、行事の楽しみのひとつでもあります。

お菓子でコミュニケーション!

「沖縄の郷土菓子は、ハレの日を彩るもの」と外間有里さん。祖先を敬い、吉日を祝う伝統行事と共に沖縄の文化の中にとけこみ、広く愛されてきました。そして、集まった親戚家族みんなで楽しくおしゃべりしながら食べるという、コミュニケーションのきっかけとしても活躍しています。

ムイグァーシは普段食べているおやつとは異なり、郷土菓子といわれるものがメインです。ちんすこうやこんぺん(クンペン)など琉球王国時代から伝わる伝統菓子もあれば、饅頭やかるかんなどの和菓子、マドレーヌやマーブルケーキの洋菓子、さらにはチョコレート饅頭のような和洋折衷のお菓子もあります。

チャンプルー文化が根付く沖縄らしく、時代や文化を問わず昔から沖縄で愛されてきたお菓子や今どきのお菓子をミックスしてお盆に盛るのが特徴です。そのため、好みが異なる小さな子どもからお年寄りからまで、幅広い世代が一緒に「美味しい!」と楽しむことができるのです。

お供え菓子

お供え菓子

お仏壇にお供えするムイグァーシは、左右に一皿ずつ対で用意します。スペースが狭い場合は小さめのお皿でもOK。数は5個、7個、9個など奇数で揃えます。

お葬式や初七日、四十九日、年忌法要などの法事でお供えするムイグヮーシは、花ぼうる、ボタンコ(コーグヮーシ)、クチシ、こんぺん、巻がん、まんじゅう、もも菓子、と体の一部を表している7種類のお菓子が基本。それぞれに意味があり、故人の身体が自然界と調和されるようにという想いが込められています。

十三年忌までは故人を偲んで白や茶色のお菓子をお供えしますが、二十五年忌と三十三年忌は故人が極楽浄土に行って神様に近い存在になりめでたいという考えで、赤く華やかなお菓子をお供えします。

お盆やシーミー、十六日祭は、ご先祖様を敬い共にご馳走を食べて一緒に過ごす日。ご先祖様をお迎えする喜びを表し、色のついた華やかなお菓子をお供えします。種類に決まりはなく、自由に選んでOK!かるかん、こんぺん、レモンケーキ、マドレーヌなどが定番ですが、「亡くなったおじいちゃんはコレが好きだったよね」「子どもはコレが好きだね」など、ご先祖様が好きだったもの、集まる人たちが好きなものを選ぶのがおすすめです。

故人との想い出を語りながらお菓子を食べて笑顔になっている様子は、ご先祖様にとっても喜ばしいでしょう。しかし、故人が亡くなって初めて迎えるミーボン(新盆)は華やかにせず、法事と同じ考えで白っぽいお菓子をお供えします。

お祝い菓子

結納盛菓子

画像提供:外間製菓所

トゥシビーや結納などお祝いの行事にもムイグァーシは欠かせません。結納の時は写真のような、男性を象徴するカタハランブー、女性を象徴するサーターアンダギー、縁結びを表すマチカジの3種類を山盛りにして用意します。

また、祝い事のお菓子は「あやかり」「お福分け」として列席者だけでなく親戚や隣り近所、友人知人たちに配る目的もあるのでたくさん準備します。特に、結び切りの形をしたピンクのマチカジは両家のご縁を結ぶ縁起の良いお菓子なので喜ばれます。

コーグァーシの美味しい食べ方

粉菓子

画像提供:外間製菓所

沖縄の行事のお菓子といえばコーグァーシ。色や形を変えて法事にも慶事にも登場しますが、食べにくいという印象があり、余りがち……。でも、コーグァーシにはいろいろな食べ方があったんです!

意外と知られていないコーグァーシの美味しい食べ方をお菓子のプロに教えてもらいました。

コーグァーシとは

コーグァーシは漢字では「粉菓子」と書きます。砂糖、落雁(らくがん)粉、水あめが原料のシンプルなお菓子です。落雁粉とは内地のお菓子の落雁に使われている、もち米をカラっと炒った米粉の一種。落雁は色を染めた粉で作りますが、コーグァーシは白い粉で作り上から色を染めるのが特徴です。そのため、鮮やかな色や多彩なグラデーションで華やかに仕上げることができます。

ひと手間加えてさらに美味しく!

鯛や牡丹などの形で手のひらサイズほどあるコーグァーシ。ほろほろとした食感と優しい甘さが特徴の昔ながらの素朴な味わいですが、「大きい」「粉っぽい」などと敬遠されてしまうことも……。

でも実は、昔はそのまま食べるだけでなくひと手間加えていろいろな食べ方を楽しんでいたそうなんです。その代表的な食べ方をご紹介しますね。

蒸す

コーグァーシに少し水をかけてラップで包み電子レンジでチンすると、しっとりモチモチとした食感になります!水は多すぎると溶けてしまうので要注意。レンジも30秒くらいずつ様子を見ながら温めてください。

焼く

フライパンで両面に焦げ目がつく程度に焼くと、サクサクッと軽い食感に変わります。お砂糖が程よく焦げて香ばしくなり、いい感じです!

溶かす

冬はお湯で溶かしてくず湯のようにして飲むのがおすすめです。コーグァーシを割ってカップに入れ、お湯を注ぎます。すりおろしたショウガやショウガパウダーなどで味付けし、甘味が足りない場合は黒糖やハチミツで調整します。

とろみがあるので喉が潤い、体もしっかり暖まるから、寒い日や風邪気味のときなどにぴったりです!

シンプルなお菓子だからこそアレンジのバリエーションも豊富。現代は美味しいお菓子がたくさんありますが、昔は一つのお菓子に工夫を施し、味の変化を楽しみながら大切に食べていたのかもしれませんね。

ぜひ、自分好みの食べ方を見つけてみてください!

外間製菓所のU-TO-TO-BOX

今回いろいろ教えてくださった外間有里さんが代表を務める外間製菓所さんには、昔ながらの味と斬新なアイディアで生まれた商品がいっぱい!そのこだわりをご紹介します。

外間製菓所とは

外間製菓外観

画像提供:外間製菓所

1953年(昭和28年)の創業以来三代にわたり、那覇市牧志の市場本通りでお菓子を作り続けている外間製菓所さん。伝統菓子から和菓子、洋菓子まで全て手作りというから驚きです!

ほとんど添加物が入っていないため賞味期限は長くないですが、体には嬉しいお菓子。事前に予約注文すれば、その日に合わせて用意してもらえます。

「おばあちゃんの代から行事のお菓子は外間製菓所」と、お客様も三代にわたる常連さんが多いそう。沖縄の伝統・文化を守りながら、現代の暮らしに寄り添った新しいお菓子とスタイルを提案してくれる、頼もしい郷土菓子屋さんです。

U-TO-TO-BOXとは

ウトートーbox

画像提供:外間製菓所

「U-TO-TO-BOX(ウートートーボックス)」とは、沖縄の伝統菓子9種類を詰め込んだ外間製菓所のオリジナルお供え菓子セット。お盆やシーミー、十六日祭などの行事にそのままお供えできちゃう便利なボックスは、見た目も可愛いので手土産としても人気です。

「お盆にお供えするお菓子は何を選べばいいですか?」「シーミーにはどんなお菓子を用意すればいいですか?」など、お客様から行事のお菓子に関しての質問が多く寄せられていたことがきっかけで作ったこの商品。

箱の中面に旧暦行事一覧表を載せたり、沖縄の伝統行事とお菓子について分かりやすく解説したプチ冊子を付けたりと、より多くの人に沖縄のお菓子文化を伝えたいという外間製菓所さんの想いが詰まったボックスになっています。

食べて美味しく、見てためになる、話題性もばっちりの「U-TO-TO-BOX」、ご先祖様も喜んでくれるはずです!

まとめ

行事のやり方は地域や家庭によって違うので、嫁ぎ先で戸惑ってしまうこともありますよね。そんなとき頼りになるのが、一般的な行事の考え方やマナーを教えてくれる昔ながらのお店。

でも、お供えは気持ちが大事なので、ご先祖様と自分たち、それぞれが好きなお菓子や普段は食べない行事ならではのお菓子を並べて、みんなで一緒に過ごすひとときを楽しんでください!

 

取材・文/仲西なほ子

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