沖縄の伝統工芸を暮らしに取り入れよう。「首里染織館suikara」

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那覇市・首里にある「首里染織館suikara(すいから)」を訪れました。沖縄が誇る「首里織(しゅりおり)」と「琉球びんがた」という二つの伝統工芸に触れることができる体験型施設です。自分で作った作品や、お気に入りの工芸品を暮らしに取り入れるアイデアもご紹介します。

「首里染織館suikara」へ

ことことじかん(suikara)素材①

2022年にオープンした「首里染織館suikara」は、琉球王朝時代から伝わる「首里織」と「琉球びんがた」を次世代へ継承していくための体験型施設。
職人さん達が技術を磨き、訪れる人々はその工芸の美しさと伝統の重みを体感することができます。

ことことじかん(suikara)素材②

1階には展示ギャラリーやショップ、2階には琉球びんがた事業協同組合、3階には那覇伝統織物事業協同組合が入居し、それぞれの工房が併設されています。
職人さん達が実際に制作を行っている様子を見学でき、染めや織りの体験ができるのも特徴です。

首里織と琉球びんがたが持つ歴史と普遍的な美しさを、未来に向けて発展させていくための重要な役割を担っています。

この方にお話しを伺いました!
suikara安里代表

 

安里 和雄(あさと かずお)さん

首里染織館suikara・代表

びんがた作家歴50年の「琉球びんがた」認定伝統工芸士。1982年創業の「安里びんがた工房」で、びんがた作品制作と体験教室を積極的に行い、びんがたの普及と後継者への伝承活動を続けている。琉球びんがたと首里織、両組合のショップとしてsuikaraを設立。近年は、かりゆしウェア制作や革製品とのコラボ作品など、新しい取り組みにも挑戦中。

  

■首里染織館suikara
住所/沖縄県那覇市首里当蔵町2-16
TEL/098-917-6030
開館時間/11:00~18:00
休館日/火曜日・年末年始・ウークイ(旧盆最終日)
HP/https://suikara.ryukyu/

「首里織」とは?

ことことじかん(suikara)素材③

「首里織」は、那覇市の首里地域に琉球王朝時代から伝わる伝統的な織物。
繊細で多彩な技法が特徴で、絹や綿を使い、細やかな柄や色彩豊かな模様が施されます。
原料となる糸には絹や綿、麻が使われ、染料には琉球藍やフクギなどの植物染料が主に使用されています。

suikara3階には「那覇伝統織物事業協同組合」があり、100名近くの職人さんが在籍し、帯や着尺などの和装用の反物はもちろんのこと、自由な発想から生まれる小物やインテリア製品も制作されています。

「首里織」の歴史

14~15世紀の琉球王国は、中国や東南アジアとの交易が盛んで、積極的に染織の技術が取り入れられ、沖縄の風土や気候に合った多種多様な織物が生まれます。

琉球王朝時代の都・首里王府では、貴族や士族のために作られた織物技術が発展し、色や柄、格式の美などが追及されました。

その中でも、王族や上流階級の女性たちに代々織り継がれてきたのが「首里織」です。首里織は全工程を手作業で一貫して生産する希少性の高い織物です。

「首里織」の作り方

ことことじかん(suikara)素材④

首里織の製法は、主に染めと織りの2つの工程で構成されます。
天然の植物染料や化学染料を使って糸を染め上げ、手織り機で模様を織り込んでいきます。

花織(はなおり)、道屯織(どうとんおり)、絣織り(かすりおり)といった多種の技法が用いられ、模様一つひとつが丁寧に織り上げられていきます。職人の熟練した技術とセンスが求められる唯一無二の織物です。

「首里織」体験にチャレンジ

ことことじかん(suikara)素材⑤

工房では、首里織づくりの体験ができます。
講師の職人さんが丁寧に教えてくれるので、初心者でも安心!

手投げ杼での本格的な機織りを60〜90分間体験し、絹糸の花織を約10㎝織り上げます。
できあがった布を、当日そのままお持ち帰りできるのも嬉しいですね。

精密な造りの高織機(たかはたき)の使い方は、足で踏み機を踏み、手投げ杼で緯糸(よこいと)を織り込みながらの作業に没頭しちゃいました。

ことことじかん(suikara)素材⑥

こちらができあがった布の一例。約1時間で、幅36cm×長さ10cmほどの布が完成します。
世界に一つの首里織、額縁に入れるなどしてインテリアのポイントに取り入れたいですね。

体験は他にも、4日間かけて半幅帯を作る本格的なものも!気になる体験メニューをチェックしてみてくださいね。

「琉球びんがた」とは?

ことことじかん(suikara)素材⑦

琉球王朝時代から受け継がれてきた、沖縄を代表する伝統的な染物「琉球びんがた」。

「紅型(びんがた)」の「紅」は“色彩”を表し、「型」は“模様”を表すと言われ、南国らしい鮮やかな色彩と、緻密でありながら大胆なデザイン性が特徴です。

沖縄県の無形文化財や国の伝統的工芸品に指定されており、伝統的な琉装だけでなく、和装向けの反物や日常使いの小物やインテリア、アート作品に至るまで、幅広い分野で技術が生かされています。

「琉球びんがた」の歴史

14~15世紀頃、近隣諸国との交易から発展し、沖縄の風土気候に育まれ、独自の技法を持つ紅型が誕生しました。

各国から染色技法が取り入れられ、琉球王朝の保護のもと、首里を中心に発達しました。

王族・士族の衣装、また国賓を歓待する芸能の踊り衣装として着用されるほか、貴重な交易品でもありました。

「琉球びんがた」の作り方

ことことじかん(suikara)素材⑧

琉球びんがたは、図案のデザインから型彫り、色差し、蒸し、仕上げの水洗に至るまで、18を超える制作工程があります。

一枚型の型紙で連続的に型附けをするのが特徴のひとつで、顔料と天然染料を併用した彩色の手法も非常に珍しく、緻密な模様と色彩の美しさを再現するために職人の高度な技術が求められます。

琉球びんがた染めを体験

ことことじかん(suikara)素材⑨

2階の工房で、琉球びんがた染め体験にチャレンジ。オリジナル柄のびんがたを選んで、トートバッグに染めていきます。

イメージ見本を参考に、防染糊を塗布して乾燥させた状態のトートバッグに色を差します。柄が細かい部分ははみ出しそうになるので、慎重に丁寧に、色を差していきます。

色差し後はそのままバッグを持ち帰り、2~3日経過して色が定着した後に自宅で糊を洗い流し、乾燥させたら完成です!

ことことじかん(suikara)素材⑩
こちらができあがりのトートバック例。大・中・小のサイズと、ベースの色を選択できます。

工芸品を暮らしに取り入れるアイデア

ことことじかん(suikara)素材⑪

見学と体験を満喫したら、最後は1階のショップ兼ギャラリーへ。
ここでは、職人さんたちの一点ものの作品から、手軽に購入できる雑貨小物まで豊富に揃います。

写真は、首里織の布や琉球びんがたのコースターを用いたテーブルコーディネート例。

職人さんたちは、伝統的な技術を生かしつつ、現代のライフスタイルに合った商品開発など、私たちの日常生活の中に工芸品を取り入れやすくする努力と工夫を続けています。

多くの時間を過ごす自宅にお気に入りの工芸品をさり気なく取り入れるだけで、暮らしをワンランクアップさせてくれそうです。

ことことじかん(suikara)素材⑫

琉球びんがたの作品を額縁に入れて「ファブリックボード」に。新築祝いの贈り物としても人気があるそうですよ。

ことことじかん(suikara)素材⑬

こちらは琉球びんがたのタペストリー。空間に涼やかさと華を添えてくれます。

実際に制作工程を見学し、体験することにより、伝統工芸品の価値を理解した上で商品一つひとつを手に取ると、作り手の想いが伝わってきます。

沖縄ならではの伝統工芸品・首里織と琉球びんがたに触れて自宅にもそのエッセンスを加えることで、先人たちが紡いできた想いを感じ、暮らしに彩りを添えてくれることでしょう

撮影・文/花城 綾子

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