「何もない」が、ちょうどいい。宜野座と大浦、東海岸をゆっくり走る休日

「今度の休み、どこに行こうか」

 

沖縄に暮らしていると、意外と答えに迷うことがあります。

 

海を見に行く。

気になっていたカフェへ行く。

買い物をする。

 

もちろん、それも楽しい。

 

でも、ときには目的を詰め込みすぎず、少しだけ時間の流れを遅くしてみる休日があってもいいのかもしれません。

 

そんな日に走ってみてほしいのが、沖縄本島の東海岸です。

 

那覇や中南部から高速道路を北へ。宜野座ICを降りると、畑や集落、海がすぐそばにある風景が広がります。

 

さらに北へ進めば、名護市大浦。

 

西海岸のリゾートエリアとは少し違う、昔ながらの沖縄の日常が今も残っています。

 

今回訪ねたのは、「道の駅ぎのざ」と「わんさか大浦パーク」。

 

ただ道の駅を巡るだけではありません。

 

そこで働く人に、その土地で暮らす人だからこそ知っている地域の魅力を聞きながら、東海岸に流れる“沖縄時間”を探してみました。

まずは宜野座へ。東海岸を北へ走る

 

沖縄本島を北へ向かうドライブ。

そう聞くと、恩納村や名護の西海岸を思い浮かべる人も多いかもしれません。

 

青い海を望むリゾートホテル。

海沿いのおしゃれなカフェ。

観光客で賑わうスポット。

 

もちろん、それも沖縄の大きな魅力です。

 

でも、その反対側にも、走ってみたい道があります。

 

沖縄本島の東海岸。

 

高速道路を宜野座ICで降りると、周囲の景色は少しずつ穏やかになっていきます。

高い建物は少なく、畑が広がり、その向こうには山。

集落の中を抜ければ、海もすぐそばです。

 

今回の東海岸の旅は、ここ宜野座から始めます。

この方にお話しを伺いました!

 

宜野座について教えていただいたのは、
一般社団法人 宜野座村観光協会の仲村優一郎さん。
生まれも育ちも、ずっと宜野座村です。

 

観光協会で働き始めて3年目。
実は宜野座村観光協会では、職員のほとんどが地元出身なのだそう。
観光の仕事をしながら、一歩職場を離れれば地域の一員。エイサーや伝統芸能にも携わり、先輩や後輩、地域のおじぃ、おばぁともつながっています。

 

観光客に見せる宜野座をつくる人というよりも、自分たちが暮らしている宜野座を、そのまま誰かに伝えている人たち。

 

仲村さんの話を聞いていると、そんな印象を受けました。

「何もない」が心地いい。宜野座に残る暮らしの時間

 

 

「宜野座の魅力って、どんなところですか?」

そう尋ねると、仲村さんから返ってきたのは、少し意外な言葉でした。

 

「自然でいうと、“何もない”というのが、またいいんですよ」

 

朝は鳥やセミの声が聞こえる。地域のおじぃ、おばぁが散歩している。

周りには畑があり、農業をしながら暮らしている人たちがいる。

一見すると、何でもない日常です。

 

でも、人や車が多い場所で慌ただしく暮らしていると、その“何でもなさ”が、とても贅沢に感じることがあります。

 

宜野座には、自然だけではなく地域の文化も残っています。

エイサーをはじめ、地域ごとに受け継がれてきた伝統芸能。

仲村さん自身も踊り手として参加するそうです。

 

「小さな村なので、横のつながりもありますし、先輩や後輩という縦のつながりもあります。そういう人間関係も魅力だと思います」

 

観光を仕事にする人と、地域で暮らす人が分かれていない。

その近さも、宜野座の空気をつくっているのかもしれません。

村の“にぎわい”が集まる、道の駅ぎのざ

 

週末には県内外から多くの家族連れが訪れる無料の水遊び場も

 

そんな宜野座の中で、大きな拠点となっているのが道の駅「ぎのざ」です。

もともと物産館として運営されていた場所に、約8年前、現在の観光拠点施設が整備されました。

 

背景にあったのは、東海岸にも人が立ち寄る場所をつくりたいという思いです。

仲村さんによれば、かつて東海岸は「素通り観光」と言われることもあったそう。

目的地へ向かう途中に通るだけ。

 

そこで、高速道路のインターチェンジがある宜野座に拠点をつくり、村を知ってもらうきっかけにしようと考えました。

 

現在の道の駅「ぎのざ」には、地元の農産物や特産品が並ぶ物産館だけではなく、大型遊具や水遊び場などもあります。

 

取材中にも、子どもたちの楽しそうな声が聞こえてきました。

 

仲村さんによると、夏場は週末だけでなく平日も、村外の保育園や学童などが訪れるそうです。プロ野球のキャンプも行われる2月には、県外からもたくさんの来客があり、道の駅も大きな賑わいを見せます。

 

小さな子どもが遊べば、お父さんやお母さんも来る。

その後ろには、おじぃやおばぁもいる。

世代を問わず人が集まれる場所です。

 

「村長がよく言うんです。宜野座のいいところは“人”だからって」

 

道の駅に生まれた“にぎわい”は、単に観光客が増えたということだけではないのかもしれません。

 

村の人と、外から来た人。

子どもと大人。

 

いろいろな人が同じ場所で時間を過ごす。

そこに生まれる小さな交流も、この場所の役割なのだと感じます。

道の駅を入口に、知らなかった宜野座へ

 

無料のガイドブックで、行き先を決めるのも◎

 

道の駅「ぎのざ」で少し休憩をして、それだけで帰るのもいい。

でも、時間に余裕がある日は、その先へ少し寄り道してみるのもおすすめです。

 

宜野座には、地元の人だからこそ知っている場所が、まだまだあります。

たとえば「松田鍾乳洞」。

観光用にきれいに舗装された鍾乳洞とは異なり、ヘルメットとヘッドライトを身につけて入る、本格的な洞窟探検が楽しめるそう。

 

野生のコウモリや生き物に出会うこともあるといいます。

 

ほかにもシーサーの色付け体験や、島ぞうりづくりなど、観光協会を通して体験できるプログラムがあります。

 

そして海へ向かえば、漢那ビーチや、あまり知られていないビーチも。

 

「どこに行こう」と最初からすべて決めなくてもいいのかもしれません。

 

まず道の駅へ行く。地図を手に取る。

気になった場所についてスタッフに聞いてみる。

そして、その日の気分で少しだけ寄り道する。

 

そんな予定の決め方も、宜野座にはよく似合います。

 

仲村さんは、

 

「西側はいろいろなところを巡ったリピーターの方が、こっちへ来られることが多いんです。ちょっとゆっくりしたいな、という方ですね」

 

と話します。

 

西海岸には、西海岸の良さ。東海岸には、東海岸の良さ。

 

「僕たちは僕たちなりの、ゆっくりした感じで」

 

その言葉が、宜野座で過ごす時間をよく表しているように思いました。

さらに北へ。海と山に囲まれた大浦へ

 

 

宜野座をあとにして、さらに北へ。

国道329号を進み、名護市街地とは反対側の東海岸を走っていきます。

 

次に向かったのは、名護市大浦。

 

大浦湾を囲むように山があり、その間に集落や畑があります。

名護の市街地から車で約20分。

距離としてはそれほど離れていないのに、窓の外の風景は大きく変わります。

 

便利な街から、昔ながらの沖縄へ。

そんな感覚になる場所です。

この方にお話しを伺いました!

 

大浦についてお話を伺ったのは、「わんさか大浦パーク」で広報・PR、経営企画、事務局などを担当する服部あや乃さん。

 

出身は愛知県名古屋市。以前は旅行会社で働き、さまざまな地域を訪れる中で、やんばるに惹かれていったそうです。

 

そして2017年、沖縄へ移住。

 

現在は大浦地域で暮らしながら、地域に関わる仕事をしています。
生まれ育った人ではなく、自分でこの場所を選んで暮らしている人。
だからこそ見える大浦の魅力があります。

海と山と畑が近い。大浦に残る昔ながらの沖縄

 

 

服部さんに、この地域の魅力を尋ねました。

 

「昔ながらの沖縄が残っているところですね」

 

そう話したあと、目の前にある風景を一つずつ挙げてくれました。

 

「山があって、海が近くにあって、畑も近くにある。自然をすぐそばに感じられることと、ここに暮らす人たちの温かさだと思います」

 

山。海。畑。集落。

 

沖縄では当たり前だったはずの風景も、街が便利になっていくにつれて、少しずつ珍しいものになってきました。大浦には、それらが今も近い距離にあります。

 

目の前に広がる大浦湾は内海のように穏やか。

その周りには、昔から続く集落があります。

大きな観光施設が並んでいるわけでもありません。

だからこそ、そこに暮らす人の日常が見える。

観光のためにつくられた沖縄ではなく、今も誰かが暮らしている沖縄。

その風景そのものが、大浦の魅力なのだと思います。

着飾らなくていい、わんさか大浦パーク

 

 

そんな大浦の入口にあるのが、「わんさか大浦パーク」です。

2024年5月にリニューアルしました。

以前は半屋外だった直売所も屋内になり、潮風などから農産物を守りながら販売できるようになりました。

さらにレストランやキッズスペース、大型遊具なども整備。

子どもたちが遊び、大人はその姿を見守りながら過ごせます。

 

「子どもたちは、ご飯を食べたら飽きちゃうじゃないですか」

 

服部さんは笑います。

だから、子どもが遊べる場所と、大人がゆっくりできる場所を近くにつくる。

家族みんなが、それぞれ無理をせず過ごせるように考えられています。

 

そして、この場所を訪れて印象的だったのが、大浦湾を望む風景です。

施設内には海を眺めながら利用できるマルチルームもあり、企業の研修やワークショップ、修学旅行などにも使われているそう。

 

でも、服部さんが話してくれたこの場所の魅力は、もっと感覚的なものでした。

 

「自然体でいられる場所、という感じでしょうか」

 

海沿いのおしゃれなカフェや、リゾートホテルで過ごす休日も素敵です。

 

一方で、そこでは知らず知らずのうちに、「せっかく来たから何かしよう」「写真を撮ろう」と考えていることもあります。

 

ここでは、もう少し肩の力を抜いていい。

 

地元の野菜を見て。

ご飯を食べて。

子どもを遊ばせて。

海を眺める。

 

「着飾らなくてもいい」。

 

取材をしながら、そんな言葉が浮かびました。

誰かに見せるためではなく、自分たちが気持ちよく過ごす。

 

そんな休日が似合う場所です。

 

わんさか大浦パークでは、大浦川のマングローブを巡るカヤックなど、地域の自然を楽しむ体験も行われています。

 

遊具で遊ぶ日があってもいい。

カヤックに挑戦する日があってもいい。

何もせず海を眺めるだけの日も、もちろんいい。

 

その日の気分で過ごし方を選べる余白があります。

予定を詰め込まない、東海岸の休日

 

 

宜野座から、大浦へ。

 

二つの場所を訪れて感じたのは、東海岸の魅力は「何があるか」だけでは語れないということでした。

 

朝の鳥の声。

畑のある風景。

地域のおじぃ、おばぁ。

子どもたちの声。

静かな海。

 

そして、その土地で暮らす人。

 

仲村さんも、服部さんも、話していたのは施設そのものよりも、そこにある地域の暮らしでした。

 

だから、この東海岸の旅も、予定をぎっしり詰め込まなくていいのだと思います。

道の駅ぎのざで地元のものを眺める。

気になった場所へ少し寄り道する。

そこからさらに北へ車を走らせる。

わんさか大浦パークで野菜を買う。

子どもたちを遊ばせながら、大人は海を眺める。

 

それくらいの一日も、きっと悪くありません。

 

沖縄で暮らしていると、海も自然も「いつでも行ける場所」になります。

だからこそ、いつの間にか行かなくなっている場所もあります。

でも、便利な街から車を少し走らせるだけで、今も昔ながらの沖縄時間に会いに行ける。

それは、ここで暮らす人にとって、とても贅沢なことなのかもしれません。

 

次の休日。

目的地をたくさん決める代わりに、

 

「今日は東へ行ってみようか」

 

そんな一日をつくってみてはいかがでしょうか。

 

 

店舗情報

 

道の駅「ぎのざ」

〒904-1304 沖縄県国頭郡宜野座村漢那1633

地元農産物や特産品を扱う物産館をはじめ、大型遊具、水遊び場、観光案内などを備えた宜野座村の地域拠点です。

※営業時間、各種体験の開催状況・予約方法などは、最新の公式情報をご確認ください。

 

わんさか大浦パーク

〒905-2267 沖縄県名護市大浦465−7

地域の農産物を販売する直売所やレストラン、キッズスペース、遊具などを備えるほか、大浦川周辺の自然体験の拠点としても利用されています。

※営業時間、体験プログラムの開催状況・予約方法などは、最新の公式情報をご確認ください。

 

取材・文/新垣 隆磨

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