海を好きでいるために、無理をしない。マリンショップに聞く、沖縄の海との付き合い方

沖縄で暮らしていると、海は観光地ではなくなっていきます。


週末に家族で出かける場所。
保育園の送り迎えの途中に、ふと眺める景色。
少し疲れた日に、ただ水平線を見に行く場所。
海が暮らしの近くにあることは、沖縄に住む大きな魅力のひとつです。


けれど同時に、海は自然そのものでもあります。風の向き、波の高さ、潮の流れ。サンゴや魚、岩場に潜む生き物たち。美しさのすぐそばには、知っておきたいこともあります。


今回お話を伺ったのは、有限会社NEWS マリン事業部 那覇店 店長の中根彰彦さん。ダイビングやシュノーケリングの楽しさだけでなく、初心者や家族連れが安心して海を楽しむための基本、自然への配慮、そして「無理をしない」という大切な判断について伺いました。


海で遊ぶことは、海を知ること。
そして、海を好きでい続けるために、少しだけ立ち止まって考えること。
沖縄の暮らしのそばにある海と、これからも気持ちよく付き合っていくためのお話です。

この方にお話しを伺いました!

 

中根 彰彦 さん
有限会社NEWS マリン事業部 那覇店 店長

愛知県出身の中根さんが沖縄に来たのは、23歳の頃。大学卒業後、就職活動の中で「なんか違うな」と感じていた時期に、ラジオやテレビで見たダイビングの世界に惹かれ、「ちょっとやってみよう」と沖縄へ渡りました。

 

「どうせなら面白いことをやりたいなと思って」

 

NEWSに入ってからは7年。その前にも同じ海の仕事に9年ほど携わっており、沖縄の海を見続けてきた時間は長いものです。

 

海を仕事にしている人の言葉には、観光案内だけではない重みがあります。きれいで、楽しい、気持ちいい。その奥にある、自然との距離の取り方。海を知っているからこそ伝えられる、やさしい注意。中根さんのお話は、海を怖がらせるものではなく、海をもっと長く、気持ちよく楽しむためのものでした。

暮らしのすぐそばに、海があるということ

 

 

中根さんの住まいは沖縄本島中部の海沿いの街。日常の中でふと海を見る時間があるそうです。

 

「子どもの保育園を送った後にちょっと見たり、子どもと一緒に海に行ったりしていると、何も考えなくていいような、癒しの時間なんです」

特別な予定を立てなくても、海に行ける。思い立った時に、波の音を聞ける。それは暮らしのすぐそばに、日々の気持ちを少しほどいてくれる余白があるということ。

 

中根さんに海の中に潜る魅力を聞くと、最初に返ってきたのは「非日常」という言葉でした。

 

「本当に、全部忘れます。潜っている瞬間って、目の前の景色と、安全管理と、今いる環境に集中するんです。プライベートで悩んでいても、ダイビングしている時間は、そのことを一切考えないですね」

 

「同じ場所に何回潜っても、そのタイミングで見られる景色だったり、雰囲気が違ったりするんです。ワクワクドキドキもあります」

 

海が近くにある暮らしは、日常のすぐ隣に非日常がある暮らしなのかもしれません。

海で遊ぶ前に、まず知っておきたいこと

 

 

沖縄の海で遊ぶとき、まず何を知っておくべきか。

 

中根さんが最初に挙げたのは「浮力の確保」でした。

 

「シュノーケリングでもダイビングでも、浮力の確保は大事です。事故が多いのは、意外と水面なんです」

 

水中で呼吸器をつけているときは道具を外そうとする人はあまりいません。けれど、海から上がった瞬間に安心して道具を外したくなる。その時しっかり浮けていなければ、水を飲んでパニックに陥ってしまうこともあります。

 

「小さい子が浮き輪を使うのと一緒で、大人も油断せずに、初めて行く場所では浮くための道具を使った方がいいと思います」

 

シュノーケリングは気軽に見える分、準備が軽くなりがちです。浅い、足がつく、泳げる——そう思っても、海はプールとは違います。波があり、流れがあり、足元も一定ではありません。

 

管理されたビーチでは、シュノーケルの使用が禁止されている場所もあります。その理由にライフセーバーならではのプロの視点がありました。

 

「シュノーケルをつけていると、ずっと顔をつけたまま浮いていられるんです。楽しんでいるのか、異常があるのか、陸から見分けがつきにくくなる」

 

安全管理のために、あえて禁止している。その背景を知ると、ビーチのルールも少し違って見えてきます。シュノーケリングを本格的に楽しみたいなら、プロのツアーを利用するのも選択肢のひとつになりますね。

風、波、潮。海は毎日、違う顔をしている

 

 

沖縄の海は、いつでも同じ状態ではありません。中根さんは、離岸流にも注意が必要だと話します。離岸流とは、岸に打ち寄せた波が沖へ戻るときに発生する強い流れ。気づかないうちに沖へ流されてしまうことがあります。


「正直、ぱっと見て分かるものではないと思います。じっと見ていると、泡の動きで流れが見えることもありますけど、慣れていない人には難しいです」
だからこそ大切なのは、行く前に情報を取ること。天気予報、風向き、波の高さ、潮の満ち引き。最近では風の流れを確認できるアプリもあります。


「波が立つのは、風の強さと風の向きなんです。太平洋側から風が吹いていると、西海岸はそこまで波が立っていないこともあります」


同じ沖縄本島でも、場所によって海の状態は違います。家の近くが穏やかでも、遊びに行く先が穏やかとは限りません。
「行ってみたら全然できない、という可能性もあります。でも、せっかく行っちゃったから、ちょっと遊ぼうかとなると、波に持っていかれたりすることもあります」


せっかくの休みだから。今日しか行けないから。その気持ちはよく分かります。けれど海は、人の予定に合わせて穏やかになってくれるわけではありません。


「心からお伝えしたいのは、海では油断はしない、無理はしないですね」


今日はやめておこう、と判断できることも、海と上手に付き合うための大切な知恵です。

サンゴと生き物に、近づきすぎない

 

 

沖縄の海の美しさをつくるもののひとつに、サンゴがあります。けれど中根さんは「サンゴにも少し毒がある」と教えてくれました。


「サンゴで擦ってしまった傷は治りにくかったりします。中には、結構強い毒があるものもあります」

 

浅い場所では、足がついた拍子にサンゴに触れてしまうことがあります。枝のように伸びたサンゴはもろいものもあり、足ひれで蹴ってしまうと折れることも。人にもサンゴにも、良くありません。

 

また、沖縄の海には岩や砂に擬態する生き物もいます。オコゼやカサゴの仲間は背びれに毒を持つものもあり、注意が必要です。

 

「遊泳区域があるビーチでも、特に海開き直後は注意が必要です。冬の間にネットを上げているので、その間に魚が入ってきていることもあります」

 

そこで役立つのがマリンシューズ。足裏を守り、岩場や浅瀬での怪我の予防にもなります。特に子どもと一緒のときは、浮き具とあわせて足元の準備も忘れずに。

 

「足をはめる浮き輪に乗せて、引っ張ってあげる感じです。マリンシューズを履かせたり、抱っこして足がつかないようにしたりします」

楽しむことと、守ることはつながっている

 

 

海を楽しむことと、海を守ること。このふたつは、別々の話ではありません。サンゴを蹴らない、浅い場所で足ひれを大きく動かさない。小さな行動の積み重ねが、海の景色を守ることにつながります。

 

中根さんがもうひとつ教えてくれたのが、日焼け止めのことでした。

 

「一般的な日焼け止めは、海には刺激が強い成分が含まれていることがあります。最近は、セーフコーラルと書いてあるものや、海にやさしいものも出ています」

 

そして、ゴミのこと。

 

「ゴミが流れていたら、気づいたときに拾うのも大事です。ただ、長く海に浮いているペットボトルなどには貝がついていることがあって、手を切ることもあります」

 

ビーチクリーンでは、手袋やトングを使う。むやみに触らない。自然にやさしくすることは、自分の体を大切にすることでもあります。

 

サンゴを蹴らない、日焼け止めを選ぶ、ゴミを残さない。沖縄の海は、週末に海へ行く私たち一人ひとりの暮らしの中で守られていくものなのだと思います。

NEWSが大切にしているのは、安全に、楽しく伝えること

 

 

NEWSのツアーで中根さんが大切にしていることを聞くと、「安全面は一番。でも、楽しいのが一番」という言葉が返ってきました。

 


「正しいことを伝えるのは大事なんですけど、伝え方が大事だなと思っています。お客様は、お金を払って遊びに来てくれているので、楽しみに来ているんです」

 

たとえばマスクの位置がずれている人がいるとき、直接指摘するのではなく、「こういうこともありますから、皆さんも気をつけてくださいね」と全体へ向けて伝えることもあるそうです。安全に楽しんでもらいながら、思い出を怖いものにしない。その細やかな配慮に、プロの仕事を感じます。

 

「プールに行く荷物だけ持ってきてもらえれば、あとは全部準備します」

 

体験ダイビングなら、資格がなくても半日ほどで体験できます。沖縄に住んでいても、ダイビングやシュノーケリングをしたことがない人は少なくありません。近くにありすぎるからこそ、きっかけを逃している人もいるかもしれません。最初の一回をプロと一緒に体験してみることが、沖縄の海をもっと好きになるための入口になるはずです。

沖縄の海を、好きでい続けるために

 

 

中根さんに、これだけ長く海に入り続ける理由を聞くと、やはり「非日常」という言葉が返ってきました。

 

「ダイビングって、海の中でしかできないので。どうせなら、きれいな沖縄の海で潜りたいですよね」

 

「水の中は無重力みたいな感じです。息の量で、すーっと上がったり下がったりできるんです。上手くやれば、海の真ん中で止まれます」

 

深く潜ればいい、遠くへ行けばいいわけではありません。光がよく届く浅瀬には、サンゴや魚の色がはっきり見える美しさがあります。海の楽しみ方は、ひとつではないのです。

 

「今日が遊ぶ日だから、多少海が荒れていても行こう、となることがあります。楽しい思い出で終わればいいですけど、体調も含めて、安全面も含めて、油断せずに無理せずに」

身近だからこそ、軽く見ない。きれいだからこそ、近づきすぎない。楽しいからこそ、無理をしない。

海を好きでいるために、引き返す勇気を持つ。また次の晴れた日に、風が穏やかな日に、体も心も海へ向かえる日に。そのくらいの余白を持っている人のそばに、沖縄の海はこれからも静かに広がっているのだと思います。

 

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有限会社 NEWS

沖縄県内で、ダイビング、シュノーケリング、

ホエールウォッチングなど海のアクティビティを実施。

ツアー内容・対象年齢・開催時期などの詳細は、

公式サイトまたは各予約ページをご確認ください。

https://www.tms-news.jp/

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取材・文/新垣 隆磨

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