涼しさと彩りを暮らしに。琉球ガラスが映す沖縄の夏

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沖縄の自然や文化を映し出す琉球ガラス。県内最大級のガラス工房「RGC株式会社」では、夏にぴったりの色鮮やかなグラスに出会えます。今回は同社で働く上原加子さんに、琉球ガラスの魅力と、マンションなどの住まいで楽しむヒントを伺いました。

この方にお話しを伺いました!
琉球ガラス村上原さん

 

上原 加子さん

RGC株式会社 セールス&コンシェルジュ部 係長

 

デザインが好きなことをきっかけに琉球ガラスの業界へ。日々たくさんの作品に触れるなかで、お客様とガラスの「出会い」をサポートする仕事にやりがいを感じています。

   
琉球ガラス村|RGC
   
https://www.ryukyu-glass.co.jp/

ガラスの泡に刻まれた沖縄のものづくりの歴史

   
琉球ガラス村コラム素材①   
   
琉球ガラスは明治時代、本土から持ち込まれたガラス製品が割れやすかったため、沖縄に職人を呼び、地元での生産が始まりました。
   
戦後は、米軍が廃棄したビール瓶などを溶かして再利用することで、現在の琉球ガラスの原型が生まれました。泡を含んだガラスは当初“欠点”と見なされましたが、やがてその泡をデザインとして活かす文化が定着します。
   
現在では、泡の出し方を職人がコントロールできるまでに技術が発展。細やかな泡をデザインとして活かしたグラスは、工芸品としての価値も高く、展覧会への出展やアート作品としても評価されています。
   

夏の景色を映したような、特別なグラスたち

   
琉球ガラス村コラム素材②   
   
夏に人気のシリーズは「ビーチグラス」や「宵の群星(よいのむるぶし)」(写真は「コスモ」)。
   
「ビーチグラス」は沖縄の海や砂浜をテーマにしたカラフルなグラス。青や緑、ピンクなどが混ざり合い、まるで海の中をのぞいているような感覚になります。
   
「宵の群星」は、日が暮れて間もない空をイメージした紫やピンクの色合いで、蓄光素材が使われており、暗くなると蓄えていた光がほのかに放たれます。昼と夜で表情が変わる、まさに“夏の魔法”のような一品です。
   
色の選び方でも印象は変わります。ブルーやグリーンは涼しげな印象を与え、夏らしい空間をつくるのにおすすめ。反対に、赤やオレンジなどの暖色系は、太陽やハイビスカスを連想させる“沖縄らしさ”を求める方に人気です。
   

色と形で、空間に「涼」をデザインする

   
琉球ガラス村コラム素材③   
   
ガラスを通して涼しさを感じたいなら、形にも注目しましょう。
   
透明度が高く、細身のブルー系のグラスは視覚的に涼しく感じられます。フォルムに曲線があると光が美しく屈折し、ガラスの魅力がより際立ちます。
   
また、“泡”を活かしたデザインも特徴的。これは沖縄の海の気泡をイメージさせるもので、インテリアとしても人気があります。ひとつとして同じ泡の入り方はなく、作品ごとに違う表情を見せてくれます。
   

毎日使ってこそ、美しさが続く

   
琉球ガラス村コラム素材④
   
「琉球ガラスを長く楽しむコツは、気負わず日常使いすること」と上原さんは話します。
   
琉球ガラスは「ソーダガラス」という種類に分類され、長期間保管したままにすると表面が曇ることがありますが、水洗いで簡単に落とせます。逆に毎日使っていれば曇りにくく、透明感が保たれます。
   
一般的なガラスより厚みがあり、手に持ったときの安心感や、口当たりのやさしさも特徴。小さな子どもでも使いやすく、家族みんなで日常的に楽しめる器です。
   

住まいに“個性”を添える、手仕事の魅力

   
琉球ガラス村コラム素材⑤   
   
新築マンションなど、整った空間ほど“均一”で無機質になりがちです。そこに、手作りならではの個性を持つ琉球ガラスを取り入れることで、暮らしに温もりが生まれます。
   
「マシンメイドのような大量生産の商品と違って、同じデザインでもひとつずつ形や色味が微妙に異なる。それがむしろ魅力です」と上原さん。
   
グラスの制作体験ができる工房もあり、自分だけの器をつくることも可能。家族やカップルで体験し、おそろいのグラスを日々の暮らしに使うことで、器にもストーリーが宿ります。
   

琉球ガラス村は、“懐かしさ”から“今の暮らし”へ進化中

   
琉球ガラス村コラム素材⑥
   
かつて観光施設として訪れたことがある人も多い「琉球ガラス村」。実は今、そこが大きく変わりつつあることをご存じでしょうか。
   
現在の琉球ガラス村では、“工芸”と“暮らし”をもっと近づける試みが行われています。ジュエリーやアート作品、インテリアに調和する洗練されたデザインのガラス作品も増え、まさに“見て終わる”のではなく“暮らしに取り入れたくなる”場所へと変化しています。
   
なかでも「RYUKYU COCOON(琉球コクーン)」と呼ばれる展示エリアでは、ガラス細工のいきを超えた圧倒的な美しさを感じることができます。「ただ日用品としての琉球ガラスを作っていては、技術の伝承も難しくなります。自然から学び、それをガラスで表現するために切磋琢磨することで技術の受け継ぎと発展がなされていきます。だからこそ、このような活動に込められた意義は大きいんです」と上原さん。
   
「昔行ったきり」という方にこそ、今の琉球ガラス村を訪れてほしい。進化した空間で、暮らしに寄り添う新しい琉球ガラスと出会えるはずです。
   

「同じ」がないから、おもしろい。琉球ガラスと過ごす、あたらしい日常

   
沖縄の自然や文化が息づく琉球ガラスは、単なる器ではなく、暮らしに「彩り」や「涼しさ」、そして「癒し」を運んでくれる存在です。
   
日用品としてのコップやお皿だけでなく、装飾品として玄関やリビングに飾るのも、日々にゆとりと色彩感を与えてくれます。
   
整った空間に、少しのゆらぎや個性を添えることで、自分だけの心地よさが見つかるかもしれません。
   
この夏、琉球ガラスとともに、“ちょっといい毎日”をはじめてみませんか?
   
取材・文/新垣 隆磨

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