住まいのカビ対策10選!沖縄は年中カビやすい?

沖縄をイメージさせるブーゲンビリア写真

高温多湿の沖縄は、一年中カビが発生しやすい環境です。各家庭でさまざまなカビ対策をしていると思いますが、実はそれ、逆効果かもしれません!カビは一度発生すると周囲に広がったり、何度も同じ場所に発生する可能性があるので、正しい対策をすることが大事。今回は、一級建築士で沖縄の気候風土にあった省エネ住宅の研究・普及活動を行っている松田まり子さんに、カビ対策について教えていただきました。

この方にお話しを伺いました!
松田まり子さん

 

松田まり子さん

松田まり子建築設計事務所代表/一級建築士

 

那覇市出身。2000年に東京都市大学(前:武蔵工業大学)工学部建築学科を卒業後、沖縄と東京で建築設計を学ぶ。2010年、沖縄の気候風土に適応した住まいづくりを研究する「NPO蒸暑地域住まいの研究会」理事長に就任。戸建て住宅の設計やリノベーション、マンションやタウンハウスの企画の他、ホテル、別荘、美術館のプロジェクトなど幅広く手掛ける一方、「蒸暑地域における湿害についてー沖縄における気候、室内温湿度、住まい、住まい方の分析ー」などのいくつもの研究発表も評価されている。

沖縄の気候とカビについて知ろう

カビ胞子の拡大写真

カビの発生を抑えるためには、カビの性質を理解しましょう。
カビは次の3つが揃うと発生しやすくなります。

  • 60~80%の高湿度
  • 20~30℃の温度
  • ホコリや皮脂などの栄養分

沖縄県の年間平均温度は23℃前後、相対湿度は冬場でも70%弱、梅雨時期は80%以上と一年を通じて高湿度なので、どの季節もカビが発生しやすい条件に当てはまります。

冬は梅雨や夏に比べて温度と湿度が少し下がるだけで、カビが発生しやすい条件であることには変わりありません。沖縄は冬でもカビ対策が必要なので、油断しないように気を付けましょう!

カビが好む栄養分はホコリや皮脂、石けんカスなど。高温多湿でもこまめに掃除をして栄養分となる元を取り除けば、カビの発生は抑えられます。

温度、湿度、栄養分とカビの大好物全てが揃わないように、意識してみましょう♪

気を付けて!逆効果のNGカビ対策3選

掃除道具のイメージ

カビ対策のつもりでやっていることが、実はカビを発生させる原因になっていることも!多くの人が誤解しているカビ対策を教えていただきました。

朝の換気

朝一番に窓を開けて換気をする。どこのお家でもやっていると思いますが、季節や部屋によってはカビの発生を促してしまいます。

例えば、夏の寝室は要注意。一晩中エアコンを入れていると部屋の空気が冷えて湿度も下がりますが、朝エアコンを切ってすぐに窓を開けるとその瞬間の外の暖かく湿った空気が一気に入り、部屋の中の冷たい空気で冷やされ壁や天井の表面が結露します。この結露が原因でカビが発生しやすくなるのです。

エアコンを切った後、部屋の温度が外気より高くなるまで待ってから開けると、逆に部屋の中の水蒸気を一気に外に出すことができます。

リビングなど、夜にエアコンを入れていない部屋は朝一番に換気しても問題はありません。朝の換気は部屋の温度を考えながら、段階を追って行うようにしましょう。

除菌スプレー

カビ予防や発生してしまったカビに除菌スプレーを使うのもNGです!菌の種類はたくさんあるので、製品によって除菌できる菌が限られています。中にはカビではない菌の除菌を目的としているものもあるので、除菌=カビ対策にはならないのです。

また、製品によってはカビの栄養分となる成分が入っている場合もあり、除菌スプレーを使用することでカビを発生しやすくしてしまうこともあるんです。

もしカビが発生したら、薄めたエタノールを使用するのがおすすめです。エタノールを布に染み込ませてカビを拭き上げてください。

スプレーボトルを使用するとカビが周囲に飛び散ってしまうので気を付けましょう。カビが発生した部分だけでなく、その周辺も一緒に掃除をすると効果的です。

浴室の漆喰

調湿作用のある漆喰はカビの発生を抑制する効果が期待できる壁材として人気です。最近ではDIYで簡単に漆喰を塗ることができるので、カビ予防として湿度の高い空間に自分で漆喰を塗る人もいますが、高湿で狭い空間に漆喰は要注意です!

漆喰は湿度が高いと余分な水分を吸収し、湿度が低くなると水分を放出するという機能を持っています。しかし、浴室や脱衣所など常に高湿度で狭い空間では吸湿するばかりで、放湿することができません。

漆喰が水分を溜め込んだままだと漆喰自体がカビてしまったり、下地にまで水分が到達し剥がれてしまいます。漆喰は、リビングや寝室などある程度広さのある部屋の壁に使用すると、空気中に水分を放出でき調湿効果を発揮してくれます。

部屋&スペース別のカビ対策4選

カラーボックスに生えたカビのイメージ

画像提供:松田まり子建築設計事務所

カビ対策は部屋やスペースなど環境や状況によって対策方法が異なります。カビが発生しやすい場所を中心に、その対策方法を教えていただきました。

寝室

家の中で特に湿気が溜まりやすい寝室。睡眠中にかく汗や呼吸に含まれる水分は相当な量です。そして、その水分は布団が吸収します。

布団に吸収された水分はゆっくりと放湿されていきますが、これも部屋の湿度を上げる原因となります。窓を開けて換気をすれば空気中の水分は外に逃がすことができますが、布団が抱えている水分まで逃がすことはできません。

寝室の対策としては日差しを利用するのがおすすめ。出かけるときにカーテンを開けるかレース1枚にし、日中の日差しを布団に当てるようにしましょう。

日当たりが良くない部屋の場合は布団をこまめに干したり、布団乾燥機などを上手に使いましょう。布団に熱を持たせるとその熱が放出される際に部屋の温度が上がるので、除湿効果が得られます。

お風呂場

お風呂場や脱衣所も高湿度になる場所。室内に通じるドアを閉めた状態で換気をするのがポイント。体を拭かずに脱衣所を出るのもNGです。

そして、お風呂上りは冷たい水を浴室内に流すのが効果的です。室内のドアをしっかり閉め、換気扇を回してお風呂場の窓を開ける。そして、水蒸気がある状態で冷たい水をバーッと壁や床に流すと、温度差で空気とともに湿気は外に逃げやすくなります。

カビの栄養素となる石けんカスや皮脂も一緒に流されカビリスクはかなり軽減されるので、毎日の習慣にするといいでしょう。

キッチン

調理法でもカビリスクは異なります。炒め物や揚げ物よりも茹でたり煮込んだりする方が多く水蒸気が発生し、湿度が高くなります。

カビ予防の対策は、料理が終わってすぐ換気扇を消すのではなく1、2時間は換気扇を回しておくこと。また、キッチンはホコリに油分が吸収されやすくカビの栄養素ができやすい場所でもあるので、ホコリを溜めないようにしましょう。

収納スペース

収納は、オープンな収納とクローズな収納で対策が異なります。

カラーボックスや飾り棚などのオープンな収納は、熱を加えた方が効果的。暖房器具や日差しなどで部屋の空気を暖めた状態で窓を開け、湿気を外に出します。また、オープンな収納はカビの栄養分となるホコリが溜まりやすいので、こまめにホコリを除去するようにしましょう。

クローゼットや押し入れなどクローズな収納は、気密を高めエアコンなどで低湿度にすることでカビを生えにくくすることができます。収納の中を低湿度にしたら室内の窓をしっかり閉めて低湿度を保ちましょう。

また、沖縄ではカビ防止のためにクローゼットや押し入れを開けっ放しにしていることも多いと思いますが、窓を開ける時は逆効果。外から入ってきた水分をクローゼットの洋服が全部吸い込んでしまうので、窓を開けるときは収納の扉はしっかり閉めましょう!

カビない暮らし方3選

カビ対策をしたお部屋のイメージ

画像提供:松田まり子建築設計事務所

日頃から低湿度を保ち、カビに悩まされることのない快適な暮らし方を意識するのもおすすめです。

模様替えをする

模様替えをすると家具で隠れていた部分を掃除することができるので、ホコリを溜め込みにくくなります。また、家具や壁に当たる日差しや風の位置も変わるので、空気も回りやすくなります。

夏は日差しを遮るように家具を置き、冬は日差しを取り入れるように家具を動かすなど季節ごとに工夫しながら模様替えをすると、カビ対策だけでなく省エネにもつながってお得です。

物を減らす

物をゴチャゴチャ置くと、ホコリや湿気が溜まりカビが発生しやすくなります。家具が多くて日差しが入らない、掃除ができない場所が多い、などもカビが発生する原因に。

なるべく不要なものは片付けるか物を減らすなど、整理整頓や掃除がしやすいインテリアにするとすっきり暮らせます。

日差しや風を利用する

除湿機やエアコンなどの家電を利用するのも効果的ですが、太陽の光や熱、風など自然を上手く活用するのもおすすめです。

日差しの熱で浴室やランドリーを暖めることはとても有効的。さらに紫外線の殺菌効果でカビ菌の繁殖を抑えることもできます。特に西日は温度を上げることができるので、布団に西日を当てるなど上手に利用しましょう。

また、風もとっても大事なポイント。湿度が99%でも常に風を与え続けてるとカビは生えないそうです。窓から入る風を取り入れるのもいいですし、扇風機やサーキュレーターを利用するのもいいでしょう。

その場合は、風を壁に当てると効果的。壁に当たった風が壁をつたって天井に上がり空気が循環します。強い風でなく微風でも十分効果があるので、梅雨や台風など高湿度でも窓が開けられない日などは壁に向かって扇風機で微風を当て続けるといいでしょう。

暮らし方をチェック!相談してみよう

俯瞰して見る模型のお部屋のイメージ

画像提供:松田まり子建築設計事務所

現在の住まいでカビに悩まされているなら、暮らし方をチェックしてもらうのもおすすめです。松田まり子建築設計事務所では、住まいや家族の生活に合わせた「カビを抑制する暮らし方」や「省エネな暮らし方」を提案してくれます。

分譲マンションの入居前に窓の向きや日差しの入り方をチェックし、部屋の使い方や家具の配置などのアドバイスも行っています。

大切な住まいと家族をカビから守り、快適に暮らしたいですよね。また、住まいを次世代に残すためにもカビを抑えて資産価値を守ることも大事です!

 

取材・文/仲西なほ子

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