「監視」ではなく「みまもり」を!沖縄発の“やさしくみまもる”プロジェクト

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この仕組みがもたらすのは、単なる安心だけではなく、心に“ゆとり”を取り戻し、暮らしに“余白”をつくる新しい日常です。

孤独死や孤立死という深刻な社会課題に向き合い、市営住宅で始まった新たな取り組みがあります。那覇市営住宅を舞台に、指定管理者であるレキオスと、おきでんシープラスシーが手を組み導入したのは、カメラやマイクを使わずに人の動きを感知できるWi-Fiセンサー。プライバシーに配慮しつつ住民の暮らしを支える“やさしいみまもり”の実証が始まっています。

この方にお話しを伺いました!
レキオスさん、おきでんさんご担当者

 

(左から)
富永 尚次 さん(株式会社レキオス)
伊福 正義 さん(株式会社おきでんシープラスシー
鈴木 勇介 さん(株式会社レキオス)
宜保 貴也 さん(株式会社レキオス)

 

   
レキオスグループ|LEQUIOS GROUP    
https://www.lequios.co.jp/
   
株式会社おきでんCplusC
https://www.cplusc.co.jp/

 

孤独死を防ぐ新たな一手──“自主事業”からの挑戦

   
那覇市内にある市営住宅の中で高齢化率は年々高まり、孤独死や孤立死といった問題が現実のものとなってきました。指定管理者として住宅運営を担うレキオスは、入居者支援の一環として「孤立を防ぐ仕組みが必要だ」と強く感じていたといいます。
   
行政の事業ではなく、あえて“自主事業”として動き出した背景には、「少しでも早く実証を進めたい」という思いがありました。危機感を共有したパートナーが、おきでんシープラスシー。同社が提供するのは、Wi-Fi電波の反射を利用して人の動きを検知する「やさしいみまもり」サービスです。テクノロジーが人を監視するのではなく、人を支える──そんな思いが両者を結びつけました。
   

カメラなしで“安心”を守る──Wi-Fiセンサーの秘密

   
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「やさしいみまもり」は、Wi-Fiルーターから発せられる電波のゆらぎを解析し、人の存在や動きを検知します。使い方も簡単で、専用の機器をコンセントに差し込み、ルーターと繋げるだけ。あとはスマートフォンでQRコードを読み込み、アプリの設定をすれば「みまもる」ことができます。特徴的なのは、カメラやマイクを一切使わないこと。プライバシーへの配慮から、導入説明会でも住民の関心を大いに集めました。
   
現在はAIの進化により、「これは扇風機の動き」「これは掃除ロボット」といった人と機械の動きの判別まで可能になっています。人の動きだけを精度高く抽出することで、生活の変化を“やさしく”みまもることができます。
   
那覇市営住宅の実証実験においては、異常を検知すると、まず家族や自治会に通知。指定管理者レキオスと連携を図りながら現地確認等を実施しています。「一定期間、動きや睡眠が検知できない」「睡眠パターンに異変がある」といった兆候を早期にキャッチし、事故を未然に防いでいるとのこと。実際に異常を検知した家族が心配で訪問したところ、熱中症で倒れた高齢者を発見し、緊急搬送につながったケースもありました。

“監視じゃない”から受け入れられる──プライバシーと安心の両立

   
やさしいみまもりコラム素材②   
   

見守りサービスの導入で最も気になるのは「監視されている感覚」。カメラが常にこちらを向いている生活は、多くの人にとって抵抗が大きいものです。しかし「やさしいみまもり」はカメラもマイクも使わず、設置もシンプル。ITに不慣れな高齢者でも違和感なく利用できます。
   
検知されたデータはアプリ上で「見える化」され、離れて暮らすご家族のスマホから確認できます。「やさしいみまもり」の導入を機に家族間のコミュニケーションが増えて嬉しいとの声もありました。「見守られる安心」と「自立したい思い」、相反する気持ちのバランスを崩さない工夫が込められているのですね。
   

住民と家族が実感する“寄り添う安心”

   
やさしいみまもりコラム素材③
   
導入説明会には多くの住民が集まり、真剣に耳を傾けていました。「これなら使ってみたい」という声が多く、実際に利用を始めた高齢者からは「一人暮らしでも安心できるようになった」との声が上がっています。
   
また、離れて暮らす家族からも「もしものときに知らせてくれる仕組みがあるのは心強い」との反応が寄せられました。監視ではなく“寄り添う安心”として受け入れられている点が、このサービスの特徴です。
   

公営住宅から沖縄全体へ──広がる可能性

   
今回の実証は市営住宅からスタートしましたが、既に県内外の不動産事業者からも多数の問い合わせが寄せられています。今後は、高齢化社会の到来に向けて、自治体や福祉関係機関等とも連携を図りながら、住まいと福祉を一体化させた取り組みが全国的に広がっていく可能性があります。
   

テクノロジーが支える“新しいゆいまーる”

   
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「昔の沖縄には“ゆいまーる”と呼ばれる助け合いの文化がありました。今は核家族化や地域のつながりの希薄化で、それが難しくなっている。でもテクノロジーがその不足を補い、人と人との関係を温かく支えてくれる──。それが私たちの目指す“やさしいみまもり”です」
   
担当者の皆さんはそう語ります。見守りは“監視”ではなく“つながり”。それを支える技術は、きっとこれからのマンション暮らしや地域のあり方に欠かせないものになるでしょう。
   

ゆとりある暮らしをつくる“安心のカタチ”

   
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レキオスとおきでんシープラスシーが市営住宅で実証を進める「やさしいみまもり」は、沖縄における暮らしの安心を支える新しい試みです。孤独死や孤立死といった課題を背景に、プライバシーを守りながら住民同士のつながりを取り戻す仕組みは、マンションや地域社会にも広がる可能性を秘めています。さらには高齢者のご両親だけでなく、共働きのご夫婦が、子どもを見守る際にも活用の幅が広がるとのこと。何より、“見守られている”という安心が心に余裕を生み、日々の暮らしに小さな余白をもたらします。これからの沖縄の住まいの在り方を考えるうえで、見逃せない挑戦です。
   
取材・文/新垣 隆磨

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