エスプレッソの一杯がくれる、人生の「ゆとり」──読谷からはじまる、イタリアのバール文化

朝のひとときや仕事の合間に、心を整える静かな時間。そんな“ゆとり”をもたらしてくれるのが、イタリアのバール文化に根付くエスプレッソです。今回訪れたのは、読谷村・大湾にあるセガフレード・ザネッティ沖縄読谷店。ここには、本場イタリアの風を感じる一杯と、それを支える人の想いが詰まっていました。

西野 将立 さん
セガフレード・ザネッティ 沖縄読谷店 スタッフ(勤務歴5年)
前職では出張が多く、東京で多くのカフェを訪れたのをきっかけにコーヒーの魅力に目覚めた。イタリア本国が直接運営するセガフレード・ザネッティの姿勢に惹かれ、入社。
以来5年間、日々変化する気温や湿度に合わせてエスプレッソの味を微調整するなど、コーヒーの奥深さに魅了されながら働いている。「マシンは生きている」と語り、日々のメンテナンスと向き合う姿勢が印象的。
セガフレード・ザネッティ・エスプレッソ|Segafredo Zanetti Espresso
https://www.segafredo.jp/
イタリアの風景からはじまった一杯
イタリア・ベネチアの港町で、少年が目にしたのは、船からコーヒー豆の袋が次々に下ろされる光景。その香りと熱気に魅せられたその少年こそ、のちに世界的なブランドを築くマッシモ・ザネッティ会長です。
彼にとってコーヒーは、幼い記憶に刻まれた感動そのもの。香り、熱、会話──エスプレッソはただの飲み物ではなく、五感と心を刺激する「体験」でした。その原風景が、今日に続く“エスプレッソ文化”の源となっています。
バール文化のように、つながりを生む場所へ
イタリアでは「カフェ(伊語でコーヒーの意味)」といえばエスプレッソのこと。出勤前に近所のバールに立ち寄り、1杯のエスプレッソと軽い会話を交わすのが日常。まるで私たちが毎日お茶を飲むように、そこには“無理のないゆとり”があります。
読谷村・大湾にあるセガフレード・ザネッティ 沖縄読谷店もまた、そんな文化を沖縄の地に根付かせる存在。観光客、地元の方、基地関係者、移住者──多様な人々が交差するこの地域だからこそ、「世界中の人においしいコーヒーを届けたい」というブランドの思いにフィットした場所だったと言います。
「マシンは生きている」──五感で向き合う仕事
西野さんが魅せられたのは、コーヒーそのものだけではありません。抽出に関わる温度、湿度、時間帯。毎日異なる条件の中で、いかに「いつもの味」を再現するか。その試行錯誤にこそ、奥深さと楽しさがあると話します。
「朝と昼とでは、まったく味が変わるんです。同じレシピでも、調整が必要なんですよ」
日々のメンテナンスに手を抜かず、味の変化に敏感であり続ける姿勢。それは、まるで楽器を調律するような繊細な仕事。エスプレッソは、五感でつくる一杯なんです。
初めての一杯から感じたこと
筆者も実際に、西野さんのすすめでエスプレッソを体験してみました。小さなカップに注がれた30mlの液体。最初のひと口で広がったのは、思ったよりもしっかりとした苦味──けれどそのすぐ後に、ふわりと広がるフルーティーな香り。
「苦いだけじゃない」。その奥には確かな甘みや酸味も感じられ、まさに五味が詰まった一杯でした。
砂糖をひと袋加えると、苦味は和らぎつつ、旨味が立ち上がってきます。カップの底に残るザラメ状の砂糖は、最後に味変として口を満たす“ドルチェ”のような存在。この体験だけでも、コーヒーの世界の奥深さに触れられた気がしました。
エスプレッソは、暮らしのリズムになる
「モカマシン」を使えば、家庭でもエスプレッソの時間を楽しめます。業務用と違い、ゆっくりと抽出するその時間が、すでに心の“ゆとり”を生んでくれるのです。
たとえば、マンション暮らしの朝。お気に入りのカップを準備して、カーテン越しに光が差すテーブルで一杯の準備をする。それだけで、1日のスタートが少し丁寧になる気がしませんか?
置いておくだけでも絵になるモカマシンは、インテリアとしても魅力的。毎日使うものだからこそ、見た目にもこだわることで、暮らしの空気も少しずつ整っていく。そんな変化も、エスプレッソがくれるギフトです。
“30mlの余白”が、人生を豊かにする
忙しさに追われていると、「休む理由」を自分でつくるのは案外難しいものです。けれど、エスプレッソという少量の一杯があれば、その時間が自然に訪れます。
五感を研ぎ澄まし、香りや温度、苦味や甘味に集中する数分間。これこそが、心を整える“ゆとりの時間”。ほんのひとときでもそんな時間があることで、暮らしのリズムは少しずつ変わっていきます。
マンションの一室でも、自然の音が届く場所でも。一杯のエスプレッソが、静かに、そして確かに人生に“余白”を運んでくれるのです。
取材・文/新垣 隆磨