「オートロックでも油断禁物?」「“走るカレー”って何?」マンションの防犯見直し術!

ここ最近、「安全」と「安心」は、暮らしのなかでますます大切なキーワードになっていますよね。特にマンションなどの集合住宅では、セキュリティ設備が整っているからこそ、住んでいる私たち一人ひとりの意識や行動が、安心感をより強く、深くしてくれます。今回は、沖縄でホームセキュリティサービスを展開しているセコム琉球の坂内菜那子さんに、日々の暮らしに活かせる防犯のヒントや最新のセキュリティ事情について、じっくりお話を伺いました。

坂内 菜那子 さん
セコム琉球株式会社 営業部
沖縄県内で、個人宅やマンションなどのホームセキュリティの提案を担当。安心は“与えるもの”ではなく、“一緒に育てていくもの”という考えのもと、地域に寄り添いながら「防犯のある暮らし」を届けている。機械と人の力を組み合わせた、やさしく、心強いセキュリティの形を提案中。
セコム琉球株式会社
https://www.secom-ryukyu.co.jp/
暮らしのそばにある、防犯という安心
「水と安全はタダという時代があったんです。その頃は“警備”のお仕事ってなかったんですよ」と話してくれた坂内さん。1962年に創業し、1983年に「セコム」という名前になっても、防犯を“新しい暮らしの価値”として日本に広めてきたリーディングカンパニーです。今では、火災やガス漏れ、救急通報までカバーした24時間365日の警備体制が整い、どんなときも「もしもの安心」を支えてくれる存在に。坂内さんは「技術そのものも大切ですが、それ以上に、毎日の中で感じる“小さな不安”を先回りしてなくすことが、私たちの役目なんです」と語ります。
お出かけ前にチェック!「走るカレー」で長期不在も安心に
旅行や帰省など、数日家を空ける予定があるとき、気になるのが“空き巣”。警察庁によると、住宅を狙った侵入被害の6割以上が「空き巣」なんだとか。
そこでセコムが考えたのが、覚えやすく実践しやすい防犯チェックリスト「走るカレー」です。
「は」…配達物を止めておく
「し」…照明のタイマー設定で在宅を装う
「る」…留守番電話の応答は「在宅中」。またはスマホ転送
「か」…鍵をきちんと掛ける。1ドア2ロック、窓にも補助錠を
「れ」…連絡を親しい隣近所、近くの親族に
「え」…SNSはすべて事後投稿
それぞれの項目を、もう少し具体的に見ていきましょう:
- 「は」配達物を止めておく
長めのお出かけが決まったら、まず見直しておきたいのがポストまわりのこと。
新聞や郵便物が溜まったままになってしまうと、防犯面でもちょっと心配ですよね。
たとえ2〜3日の留守でも、意外とすぐに郵便受けはいっぱいに。そんなときは、配達の一時停止をお願いしておくと安心です。
また、通販などで頼んだ荷物がちょうど留守中に届いてしまわないよう、日時指定をしておくのもひとつの手。
小さな備えが、大きな安心につながります。
- 「し」タイマー照明で「ただいま感」を演出
夜になってもずっと真っ暗なおうちは、外から見ても「留守です」と言っているようなもの。そんな時は、照明をタイマーで自動点灯にしてみましょう。外から見える部屋にほんのり灯りがともるだけでも、「誰かいるかも」という空気が生まれます。
もし可能であれば、ラジオやテレビもタイマーで起動させて「音の気配」も加えると、より効果的ですよ。
- 「る」留守電メッセージ、ちょっと工夫を
意外と見落としがちなのが、固定電話の留守番メッセージ。空き巣は、電話をかけて留守かどうかを確認することもあるそうです。「◯日まで留守にします」「旅行中です」といった内容は避けて、「ただいま電話に出られません」など、“在宅中”を装う言い回しに。もしくは、スマホに転送されるよう設定しておくのも安心です。
- 「か」鍵の施錠は“基本中のキホン”。窓にもひと工夫を
防犯の基本はやっぱり施錠。でも長期でおうちを空けるときは、よりしっかり対策したいところです。特に狙われやすいのが“窓”。補助錠をプラスしたり、防犯フィルムを貼るだけでも、ガラスを割るのに時間がかかり、空き巣があきらめる可能性がぐんと高まります。“時間をかけさせる工夫”、これがポイントです。
- 「れ」ご近所さんや親せきに、連絡とひとこと声かけを
不在のあいだ、何かあっても誰にも気づかれないのは心配ですよね。そんなときは、信頼できる近所の方や、近くに住むご家族・友人に「〇日から〇日まで留守にします」と伝えておくと安心感が違います。万が一のときのために、連絡先も共有しておくとより安心です。
- 「え」SNSの投稿タイミングに気をつけて
旅行中やおでかけ先で「楽しい!」気持ちをすぐにシェアしたくなりますよね。でもそのリアルタイム投稿、実は危険信号になることも。空き巣がSNSで不在情報を探しているケースもあるそうです。「〇日まで実家です」「明日から旅行」などの予定投稿も含め、SNSへの投稿は、帰ってきてから“思い出シェア”がおすすめです。
これらはどれも少しの意識でできることばかり。毎回全部やろうとしなくても大丈夫。「全部やらなきゃ!」と気負わずに、できることから少しずつ取り入れていくことが、安心につながっていきます。
最近の侵入手口と、意外と見落としがちなポイント
以前はピッキングやサムターン回しといった“鍵を開ける”手口が多かったそうですが、最近はディンプルキーのような防犯性の高い鍵の普及で、それも少なくなってきたそうです。
その代わりに増えているのが、「鍵をかけ忘れた窓や玄関」など、無施錠のすき間を狙う犯行。また、SNSの投稿や、アンケート・訪問営業などを通じて、生活パターンや不在の時間を“観察”されてしまうケースもあるとか。
坂内さんは「どこで誰と過ごしているか、気づかないうちに発信してしまっていることって、意外と多いんです」と話します。まずは「鍵をかける」「SNSなどで自分の情報は不用意に出さない」などを意識することからはじめてみましょう。
いま注目の“おうち防犯グッズ”、知っていますか?
テクノロジーの進化で、防犯対策もぐっと身近に、そしてカンタンになっています。たとえば…
スマートロック:外出先から鍵の確認&操作ができて、かけ忘れ防止にも◎
タイマー照明:設定した時間に自動でON/OFF。在宅を装うのにぴったり
ネットワークカメラ:スマホからおうちの様子をチェック。通知機能付きも
窓センサー:開閉や振動に反応してアラームや通知をしてくれる頼もしい存在
ただし、どんな機器も“つけて終わり”ではなく、定期的にメンテナンスすることが大切。操作方法を家族で共有しておくと、もしものときも安心ですね。
マンションに住んでいるからこそ、意識したいこと
「オートロックがあるから大丈夫」と思っていませんか?実はそこに、思わぬ落とし穴も…。たとえば、後ろの人が続いて入ってくる「共連れ」は、意外と多くのマンションで起きています。
また、高層階でもベランダが無施錠だったりすると、屋上や隣の部屋から入られてしまうケースも。さらに大規模修繕の時期などは、足場が組まれていて侵入しやすくなっていることもあるので、マンションでもこまめな施錠が大切なんです。
「見られている」「気にされている」空気を出すことが、実は防犯にとってすごく大事です。共用スペースをキレイに保ったり、掲示板を整えておくことも立派な防犯対策になるんですよ。
防犯に“強い”住まいって、どんな住まい?
坂内さんいわく、「住んでいる人の意識があるかどうか」で、防犯力はぐっと変わってくるそうです。たとえば、
・玄関や窓を出かけるたびにこまめに施錠する習慣をつける
・ご近所さんとあいさつを交わすような関係性を築く
・植栽が伸びっぱなしにならないよう、見通しをよく保つ
・室外機や物置の配置に注意して、足場にされないよう注意する
どれも特別なことではなく、日々のちょっとした心がけ。積み重ねが、安心を育ててくれます。
安心は、機械だけじゃない。“人のつながり”がつくるもの
セコムでは、AIやセンサーで見守る仕組みを導入しつつも、「最後に現場で動くのは、人であるべき」という考え方を大切にしているそうです。
「最新機器も頼もしい存在ですが、安心を感じるのって、“誰かが見ていてくれる”ときなんですよね」と坂内さん。近所の方とのさりげないあいさつや、家族内での防犯の話し合いなど、人とのつながりが、安心感を育んでくれるのだと実感しました。
防犯って、難しくてハードルが高いもの…ではなく、毎日の暮らしの中に自然に取り入れられるものなんです。鍵をしっかりかけること、あいさつをすること、少し気をつけてSNSを使うこと。それだけでも、わたしたちの暮らしはぐっと安全になります。
坂内さんが教えてくれたように、“安心”は誰かに与えられるものではなく、自分たちで育てていくもの。これからのマンション暮らしに、ちょっとした「防犯の視点」を取り入れて、もっと心地よく、もっと安心できる日々をつくっていけると良いですね。
取材・文/新垣 隆磨