色彩心理学の効果をインテリアに活かそう!
家を建てる、買う、引っ越す、リフォームする、家具を買う…など、インテリアを考えるときにぜひ取り入れたい色彩心理学の効果。「色は毎日を楽しくする」をモットーに、色彩の持つ魅力やチカラを活用することを提案している我那覇奈緒さんに、暮らしやインテリアにおける色の影響力や選び方を教えていただきました!
我那覇 奈緒さん
株式会社あしたのたのしみ 代表/セレクトショップcolor of … 代表
浦添市出身。色彩が心や身体に与える影響に興味を持ち、高校在学中に色彩検定1級を取得。その後上京し、バンタンデザイン研究所スタイリスト科卒業、自由が丘産業能率短期大学経営情報コース修了。県内の企業で色彩心理、パーソナルカラー、色彩設計の仕事に7年間携わり、2017年浦添市にセレクトショップ兼カラースクール「color of…」をオープン。教育・福祉、人材育成の場で講演会や資格取得のためのセミナーを行う。保育園や医療関連の施設を中心に、利用者の快適さをより高めるためのカラーコーディネートを手がけている。
セレクトショップ&カラースクール color of…(カラーオブ) https://www.colorof123.com/
公式インスタグラム https://instagram.com/colorof123?igshid=NTc4MTIwNjQ2YQ==
暮らしにおける「色」の影響と活かし方
色彩心理学とは、色の特徴や性質が人間にどのような影響を及ぼすかを研究する学問です。人は無意識のうちに心や体が色に影響されています。
住環境では壁紙や床、カーテンなど大きい面積で色の刺激を受けることになるので、その色が持つ特徴や性質を知って選ぶとより快適に心地よく過ごせる理想的な空間を目指すことができます!
色が心と身体に与える影響
大脳の視覚野に入った色の刺激は下垂体や松果体、視床下部に伝わり、内分泌系や自律神経系の働きに影響を与えます。代表的な色とその影響を紹介します。
【赤】
交感神経を刺激しアドレナリンを分泌させ、興奮状態にする。心拍数上昇や身体機能もアップするため、いつも以上の力が出せる。
【青】
セロトニンを分泌させ、精神を沈静化して落ち着かせる。集中力を高め、「爽やかさ」や「清々しさ」を感じ癒される効果がある。
【黄色】
成長ホルモンの分泌を促し、運動神経や脳を活性化させ、やる力を高める。ゆるやかな気分の高揚や幸福感をもたらす色。
【オレンジ】
ドーパミンを分泌させ高揚感を高めてくれるので、効率アップに繋がる。食欲増進作用もあり、消化や新陳代謝を活性化する。
【緑】
情緒を安定させ、安心感と癒しを与える。鎮静作用や血圧を下げる効果、傷ついた細胞を再生する効果もある。
このように、色にはさまざまな特徴があるんです。
色の機能を活かす
実際に、壁や床などを全て赤にした部屋と青にした部屋で行った実験では、体感温度が4度も違うという結果が出ています。赤の部屋では心拍数が上昇して興奮するため体温が上がり、青の部屋では心拍数が減り鎮静化して体温が下がる、という現象が多くの実験によって実証されています。
どの色が良い、悪いではなく、色の特徴を部屋の機能とどう一致させるかがポイントです。色がなくシンプル過ぎると、無機質な雰囲気で家族の会話も減ってしまいます。逆に、色が多くカラフル過ぎるとゴチャゴチャして落ち着かず、居心地が悪くなってしまいます。
リビングやダイニング、寝室などそれぞれ部屋の機能が活きる色をほどよく取り入れると、快適な空間にすることができますよ♪
インテリアカラーの決め方&選び方
「家を考えることは人生を考えること」と我那覇さん。「どんな住まいにしたいか」は「どんな暮らしがしたいか」ということなので、人生観や家族観が関わってきます。インテリアの色を選ぶときにも、「どんな暮らしがしたいか」がキーポイントとなります。
テーマを決める
家づくり、部屋づくりは長期間かかるので、選びながら迷うことがほとんどです。そこでまず、色を決める前にコンセプトを決めましょう!「こんな色にしたい」ではなく「こんな過ごし方をしたい」と部屋ごとのテーマを明確にします。
リビングは家族で楽しく会話が弾むように。
ダイニングでは健康的に美味しく食事ができるように。
子ども部屋は勉強に集中できるように。
など、ちゃんと言葉にして、イメージする部屋の雰囲気の画像も集めましょう。そうすると、家具選びで迷ったときや小物を買い足すときなどに、言葉とビジュアルで再確認することができるのでブレません。
色で仕掛ける
部屋ごとのテーマが決まったら、部屋の機能とテーマを活かす特徴を持った色を選びます。
例えば、家族で楽しく会話を楽しめるように、リビングには陽気な気分になるオレンジを取り入れる。ダイニングには食事が美味しそうに見え、コミュニケーションを円滑にしてくれる黄色を取り入れる。などの効果を利用し、「こんな過ごし方をしたい」というテーマを色にサポートしてもらいます。
部屋だけでなく、トイレやお風呂にもぜひ“色の仕掛け“を忍ばせましょう!人の肌に近い色の方が筋肉に力が入らずリラックスできるので、トイレやお風呂はビビッドカラーよりもパステルカラーを選ぶのがおすすめです。
特に子どもがまだ小さい場合はトイレの壁紙を淡いグリーンや淡い黄色などにすると、リラックスできるのでスムーズに排泄することができます。
このように、各部屋に“色の仕掛け“を設置すると、意図した暮らし方や過ごし方が実現しやすくなります!
好きが一番!
色の機能を活かすには、少しその色を取り入れればいいのです。ダイニングに黄色の機能を活かしたいからといって、黄色一色にする必要はありません。
やっぱり“好きな色“が一番心地いいので機能よりも好きを優先し、その中で少し黄みがかった色合いを選べばいいのです。例えば、ダイニングをピンクにしたい場合、青みがかったローズ系のピンクではなく黄みがかったサーモン系のピンクを選べば黄色が持つ機能も発揮されます。
“好き“が一番大事。その“好き“をベースに機能に合わせて色の微調整をするのがコツ。そうすると、心地よく楽しみながら機能性も得ることができます!
統一感を持たせる
画像提供:color of…
部屋の中には、壁紙やカーテン、家具など大きな面積で色を持つものがたくさんありますが、全く同じ色で揃えるのは難しいですよね。また、たくさん色を取り入れたい場合もあります。そんなときは、共通する要素を決めて統一感を持たせるようにしましょう。
インテリアを一色で揃えるなら、明度や彩度が違っても合わせやすいので大丈夫。例えば、明るい青、濃い青、鮮やかな青、落ち着いた青など、同じ青であれば数種類組み合わせてもまとまります。
3色以上使うときは、トーンを合わせます。トーンとは、色の明るさを指す明度と、色の鮮やかさを指す彩度を組み合わせた色調のこと。ピンクと青と黄色を使う場合、パステル系、ビビッド系、ダーク系など同じトーンの中から選べばカラフルでもまとまりやすくなります。
やってはいけない!NGインテリアカラー
インテリアで失敗しやすいことなど、NG例も教えていただきました。
モノトーンコーデは要注意
モダンな雰囲気にする場合、黒やグレーを多く使用することがありますが、黒は無意識に体に力が入る色です。寝室を黒やグレーにすると寝ながら力が入るため歯ぎしりをしたり肩が凝ったりと、寝ても疲れが癒えないということになってしまいます。
また、黒はコミュニケーションをシャットアウトしてしまう色でもあるので、家族の会話が減り部屋に引きこもりがちになる可能性があります。心の発達にも影響するので、特に子育て中の家庭ではモノトーンのコーディネートはあまりおすすめできません。
真っ白な部屋は避ける
白はシンプルで清潔感があり人気ですが、青みがかった冷たい白の部屋にすると緊張やストレスを感じてしまいます。壁紙や床を白にする場合は、黄色やピンクに少し寄せた、人肌に近い白を選んで温かみを出すようにしましょう。
ちぐはぐの色にしない
統一感のないちぐはぐの色の組み合わせは落ち着かないですよね。人は統一感や調和されているものよりも違和感の方が気になる、目に付くという習性があります。
住環境の中に色のちょっとした違和感があると、ずーっと気になってソワソワしてしまうんです。インテリアを選ぶときにテーマや共通項をきちんと決めて、ちぐはぐにならないように気を付けましょう。
簡単で効果的、おすすめの技!
インテリアやお片付けって、子育て中はなかなか理想通りにはいきませんよね…。
「キレイな色でお洒落にしたいけど、現実は無理」
「せっかく統一感のあるカラーで揃えたのに、床には子どものおもちゃが散乱している」など、いろいろな悩みがあると思います。
そこで我那覇さんが提案してくれたのが、子育て中のお母さんやお父さんにおすすめの「一点理想主義!」。家のどこかに自分の気持ちが上がるアイテムを1つ取り入れ、“理想のスポット“をつくるんです。
例えば、好きな風景や花のポストカードを額に入れて飾る。
寝室のカーテンは思いっきり自分好みのものにする。
棚の一角に趣味のコーナーをつくる。
など、子どもに邪魔されない場所に、好きなものや見て癒されるものを置いてみましょう。
散らかっている部屋にうんざりしたとき、やることが多くて疲れているときに“理想のスポット“を見て「頑張ろう!」「今日もいい日だ!」と気持ちを切り替える“仕掛け“をつくるのです。簡単にできて効果的なので、ぜひお試しください!
まとめ
画像提供:color of…
インテリアカラー選びに自信が無い人やしっかりコーディネートしたい人は、プロに相談してみてはいかがでしょうか。「テーマやコンセプトを一緒に決めて、カラーコーディネートからカーテンや家具選びのアドバイスなどもしています」と我那覇さん。色選びの軸が決まるので、家具や小物を買い足すときにもブレずにトータルコーディネートがキープできるのでおすすめです!
取材・文/仲西なほ子