空間づくりは家族作り!心理学で心地よく暮らすための家づくり vol.1

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「家づくり」は建物の設計だけではなく、そこに暮らす家族の心と絆を育む大切なプロセスですよね。今回は沖縄での暮らしのヒントとして心理学を活かした家づくりを、前編・後編に分けてご紹介!心理学を活用した、家族が円満になる家づくりの秘訣をお伝えします。

この方にお話しを伺いました!
まえうみ

 

まえうみさきこさん

ielie(イエリエ) 代表

   

一級建築士、インテリアコーディネーター、空間デザイン心理士®︎、ライフオーガナイザー(脳科学の整理収納)
   
建設会社で一級建築士やインテリアコーディネーターとして20年間の勤務を経て、2021年に起業。キャッチコピーは「建てない一級建築士」。「住まいやオフィスの空間の悩みを心理学で解決する」ことをコンセプトに、「住まい診断」や間取りチェックなど住まいに関するコンサルティングを行っている。

   
ielie(イエリエ)
https://www.ielie.net/
   

 まえうみさんのはじまりのストーリー

   

「建てない一級建築士」とはどういうこと!?まえうみさんの活動とは!?「空間デザイン心理学(R)」とは!?どのように暮らしと心理学を繋げる活動をしていらっしゃるのか、まずはまえうみさんのストーリーを紐解きます。
   

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まえうみさんのはじまりのストーリー

   

まえうみさんの出身は、沖縄県嘉手納町。琉球大学工学部環境建設工学科を卒業して、地元の建設会社に入社され、約20年間に渡って設計デザインやインテリアコーディネーターとして活躍されました。新築を建てたいというお客様に、間取りやインテリアなどの住まいの提案を担当されていたのです。
   
イラストを描くことが好きで、「表現する仕事がしたい」と考えていたまえうみさん。父が建築業だったことから、幼いころから週末には現場に一緒に連れて行ってもらっていたとのこと。そうした経験からも、「自分が手がけた建物が残る仕事は素晴らしい」と建設業に進んだそうです。

きっかけとなった「空間デザイン心理学(R)」とは

   

そんなまえうみさんが、「空間デザイン心理学(R)」に出会ったのは、在職中。業務の多忙さから夫との家族仲に不和が生じたことがきっかけでした。
   
「空間デザイン心理学(R)」とは、脳科学、人間行動学、生態学、心理学の視点から空間をつくり、住む人の脳と心に空間がどのように影響しているかを考えます。例えば、「色」が人の感覚や行動に影響を与える事例として「赤い部屋は興奮しやすく、時間が長く感じられる。一方で、青い部屋は冷静さを保てる」ことや、「大柄や派手な内装デザインの部屋は目に刺激があるため、情報量を多く感じて滞在時間が長く感じる」など、そこにいる人の気持ちや行動に影響を与えています。
   
目に見えない心の動きを「空間」を通して変えられる。これを意図的に活用して、家族が自然に会話を始められる空間づくりをサポートするのが、まえうみさんなのです!驚くべきことに、家具の配置一つで、家族のコミュニケーションの質が大きく変わるそうなのです!部屋の中で意図せずに置いた家具が大きく影響し、まさか配置一つでそのようなことが起こるなんて、聞いた瞬間に驚きました。
   
「これまでに何千というお客様の家づくりをサポートしてきたが、お客様自身が「家族にとって本当の理想の家を絞り出せていないままだった」とまえうみさんは振り返ります。家を決める前に、「家族の絆とは」「家族がどういう人生を歩んでいきたいのか」を聞いてお客様と向き合い、心理面から家づくりを組み立てをしていくのです。
   

部屋に建築士×心理学を活かす

   

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実際に心理学をどう使うのか、気になりますよね!?ずばり、ポイントは「家具の向き」!
   
まえうみさんによると、「家族・夫婦が仲良くなる家具の向き」や「家族のコミュニケーションが活発になる家具の向き」があるそうなのです。ますます気になります・・!
   
「家族・夫婦が仲良くなる家具の向き」は、家族同士の目線が合う家具の向きにするということで、「家族のコミュニケーションが活発になる家具の向き」とは、会話が始まりやすい家具配置があるということなのです。
   
例えば、「家具が目線を妨害しない配置」。
   

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これは、実際のまえうみさんの自宅のリビングダイニングの家具配置を表した、直筆のイラストです。
   
左側(ビフォー)は一見違和感ないように見えるが、目線が交差しない配置になっていることがわかるでしょうか。同じ空間にいるにも関わらず、家族の目線が合わないのです。名前を呼んでも、目に入らない・自分の周りの音で聞こえない状況が生まれると、「無視しているのか?」という心理が生まれるというのです。
   
お母さんが一人でキッチンで料理しているとその様子が見えていないことから、「私ばかり大変なのに」という心理にもなったり、テレビを見ながら返事をされたときに顔が見えないと「ちゃんと私の話を真面目に聞いてくれているのかな?」という心理に陥ってしまうのです。
   
図の右側(アフター)でまえうみさんは、キッチンカウンターの設置やテレビ・ソファーなどの配置を変更しました。そうすると、家族全員がみんなの顔を見渡せることができるように。キッチンカウンターで料理の準備をしていると、息子さんが手伝ってくれたり、ソファーの位置を部屋の中央に向けたことでテレビを見ながらでも会話ができるようになったそうです!こういった変化が、空間と家具、心理の働き方なのです。
   

「空間は人の脳と心に影響する」

   
「空間がどのように心や人との関係性に影響をしていくのか、住んでいる人も分かってない・気づいていないことが多い」とまえうみさんは話します。その実践や引き出し方を実体験を基に教えていただきました。
   

まえうみ家の実体験

   

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「離婚危機を乗り越えたエピソードなんだけど」と口火を切ったまえうみさん。まず「家」とはリラックスできる・休めるということのほかに、「自分はここにいていいんだ」という安心感や仲間意識、自分の居場所として「この家で大切にされている」という承認欲求を満たすための場所して機能することが理想とのこと。
   
そのような中、まえうみ家では家を見渡すと「夫の居場所がない!」という現状があったのだそうです。仕事が深夜まで及ぶことが多かったため、気を遣ってリビングのソファーで寝るようになった夫は、家の中で安心できる空間がなくなっていたそうです。夫婦仲に亀裂が走る中、空間づくりが不仲を作っていることに気が付いたまえうみさんは、ダイニングに「夫専用のイス」を用意します。子どもたちには座らせず、夫の不在時にも夫だけの席があることで、子どもたちが「お父さんがいないけどいるみたいだね」と話をしだしたそうです。
   
夫には「あなた専用だから座ってね」と促すことで、「お疲れ様」や「頑張ってね」という気持ちをイスを通して暗に伝えることを続けました。
 

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心理学を取り入れたことで、家族のコミュニケーションに変化が生まれる!

  

心理学を取り入れ、そういったことを継続することで、夫婦がお互いに尊重し合い「居場所がある」「認められている」と実感するということが起こったそうです!
   
まえうみさん自身も、「夫専用のイス」を配置したことで夫の存在を考える時間が増えて、夫が施してくれていた些細な優しさに気づくことができ、自身が子どもだけに集中していたり、自分中心になっていることに気づかされたそうです。もちろん、夫との関係性や家族仲も劇的に回復!「妻に労ってもらっている」という安心感を感じてもらえることができたそうです。「離婚する間取りや配置があると実体験をもって感じたことで、お客様を救いたいと思った」まえうみさんは語ります。
  

住まいに「居場所」や「場所の役割」が大切な理由とは

  

とても大切なのは、「家のなかでの居場所づくり」。これまでご紹介してきた「家族の空間」と相反する「一人になれる空間」も必要だと言います。まえうみ家では、家族で集まるときは集まって仲良くするけれど、一人になりたいときは自由にそれぞれが自分の好きなことをする。明確に分けることで、家族全員のメンタルが穏やかになったそうです。
   
では、「居場所」という定義はなんでしょうか?それは、「私だけの空間」「ここで何をしても守られている空間」「自分でコントロールできる空間」。住まい診断で最近多いのは、「自分だけのワークスペースがほしいけど、狭いからできない」という悩みだそうです。よくありがちなのは、主婦がダイニングテーブルでそのまま仕事をしてしまうこと。狭くても、空間をつくることは可能だとまえうみさんは語ります。物理的に場所ごとの役割を固定することも大切なのです。
  

家具の配置で家族(夫婦)のコミュニケーションが増える?!

 

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重要なのは、「家族のコミュニケーションが生まれる住まい」。そのためには、日頃から家族同士が顔を合わせやすくなる間取りが必要不可欠です。「コミュニケーションが成立しづらい間取りやその状態のループが続くと、家族であっても相手へ関心が薄れてしまい、家族不和にも発展しかねない」とまえうみさんは危惧します。「ザイアンス効果」といって、頻繁に会うことで親近感が増すという心理学の法則があります。毎日顔を合わせることが家族の関心と愛情を育て、家族が集まる。そうすることで、言葉を交わせる空間になり、家族は一つにまとまっていくのです。
   
後半では、家庭でも取り入れらえる「家族が円満になる家具の向き」などをご紹介します!ぜひ、お楽しみに!
   

取材・文/札本咲子

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